耳は悪くない・正常なのに人の話(会話)が聞き取れないのは病気?

耳は悪くない、正常なはずなのに、なぜか人の話が聞き取れないことはありませんか?
雑音がうるさい時だけ、大勢で会話する時だけ、飲み会の時だけ、というケースもあるようです。
病気なのか、どこか悪いのか、何か障害があるのかと不安に思ってしまいますよね。
今回はその原因に迫ってみたいと思います。

聴覚検査の結果は良好、耳は正常なのに会話が聞き取れないことがある

職場や学校での健康診断では、聴力検査に引っかからないのに、なぜか会話が聞き取れないということがありませんか?

もしあるのだとしたら、まずお伝えしたいです。

そのように悩んでいる人は、あなただけではありませんよ。

今まで、人に相談しても、「気のせいじゃない?」「たまたまじゃない?」「いや、そんなことないでしょ。普通聴き取れるよ。」と、取り合ってもらえなかったかもしれません。

でもそのような症状を訴える人は確かに存在します。

安心してください、とは言えませんが、

あなたがそういった症状を感じているのであれば、それはそう感じさせる何かしらが発生しているのだと思います。

他人は同じ症状を体験することはできませんから、自分以外の人間がどう言おうと、それをそのまま鵜呑みにする必要はありません。

自分の変化に日々気をつけていて、こまめに病院に行く人は長生きをすると聞いたことがあります。

逆に、少しの変化を見ないふりして先延ばしにして、悪化して取り返しにつかない状況になったり回復に時間がかかったり、ということもよく聞かれることです。

(むやみに行き過ぎるとよくないという意見もあるようですが)

カラダに違和感を感じたのであれば、その声に正直に従いましょう。




会話中、話を聞き取れない場合、脳に異常があるのか?病院に行くべきか?

話が逸れました。

会話が聞き取れないことがある、という症状を、シチュエーションやケース別で見ていきましょう。

飲み会の時にだけ話が聞き取れないのは何で?病気?

飲み会の時にだけ、話が聞き取れないという症状を訴える人がいます。

アルコールが入ると、途端に、音を言葉として聞き取れなくなるんです。

何か喋ってるな、聞かなきゃ、と思うんだけど、全く、言葉として聞き取れない、意味のあるものとして聞き取れない、という感じです。

会話になりません。

酩酊しているわけではありません。

意識はあるし、話を聞こうとはしているけど、聞き取れない。

普段は聞き取れるのに、酔うと聞き取れない。

この場合考えられるのは、

  • アルコールで、脳の、言葉を聞き取る部分も酔っ払っている
  • アルコールの分解に体の機能が集中して、他の部分が疎かになっている

飲酒すると、フラフラするのは、平衡感覚を司る器官である小脳が麻痺するためだそうです。

同じように、聴覚に関わる脳の器官が麻痺して、正常に音を言葉に変換できないという可能性はありそうですね。

でも、酔うことで聴覚に影響が出る人とでない人がいます。

また、人によって酔い方も違います。ある人は饒舌になり、ある人は喋らなくなり、ある人は歌い始め、ある人は眠くなり、ある人は陽気になり、ある人は愚痴を言いだし、ある人は泣き上戸になる。

アルコールが影響を及ぼしやすい場所も、人によって差が出ることはあり得る話です。

アルコールの分解能力も、性別や体格、遺伝子により差がありますし、アルコールという異物が入ることで、体内の器官別での働き具合に差が出ることも考えられなくはないです。

また、そうでなくて、もともとの音の認識能力に差があって、もともと聞き取りが得意な(正常な)人と、やや苦手な人では、バッファーの大きさが異なり、飲酒による脳機能低下率は同じでも、聞き取りが「可能な人」と「困難になる人」という差が出る、ということかもしれません。(上の図を参照)




電話で相手の言っていることが聞き取れないのは耳が悪いのか?

普段は大丈夫だけど、電話だと急に聞き取りが難しい、という人もいるようです。

もう少し具体的に分類すると、

  • 聞くだけならなんとかできるけど、覚えていられない。
  • 聞くだけならなんとかできるけど、メモが取れない。
  • 聞き取り自体が難しい
  • 言葉ごとの聞き取りに集中していると、会話の全体を捉えられない

そもそも電話の音は生声より聴き取りにくい

電話だと、生の声とは違って、電話機によってまず電気信号に変えて、それをまた電話機で音に変換し直します。

なので、電話線に乗せられる情報しか乗せられませんので、音情報が生の場合よりは少なくなっています。

それをさらに、人の内耳が電気信号に変え、脳が音として認知し、言葉として解釈します。

元の情報が少なければ伝わりにくいでしょうし、さらに受け取る側の音の認知、言葉としての解釈の部分が拙ければ、正しく聞き取るのは難しくなります。

要は、電話は生の声よりも聞き取りにくいのは当然と言えば当然です。

電話機から聞こえる音を、言葉として認識するのに、まず慣れる必要があります。

新卒で電話応対をし始めたばかりだと聞き取りにくいが、徐々に慣れるというケースはよくある話です。

聞くのはなんとかできるけどメモできない、覚えていられない

集中してなんとか聞き取れたけど、同時にメモを取ることや、聞き取ったことを覚えておくことが難しい人もいます。

なので、今まで他の職種で特に不自由を感じたことはなく、むしろ仕事はできる方と思っていた中年の方が、転職先や転属先で初めて担当した電話の応対でつまづき、困惑する、落ち込む、というケースがあるようです。

これにはまず、いわゆる「ワーキングメモリ」の問題が挙げられます。

\ワーキングメモリとは/

ワーキングメモリは「作業記憶」「作動記憶」ともいい、短時間だけ脳に情報を記憶し同時に処理する能力、のことだそうです。

簡単にいうと、何かを覚えておきつつ、別の考え事もしてもその情報を覚えておける記憶力のことです。

パソコンでいうと、一時メモリとか、キャッシュとかいうものでしょうか。

電話の応対って、

聴きつつ、聴いたことを覚えつつ、書き言葉にアウトプットして、かつ書いている間も新しい言葉を聞き取る。かつ、それに対して合間合間に相槌を打ち、相手が言ったことが可能かどうか、どう対応すべきかも考えている。

普段普通にやっている人でも、こうして言葉にすると、結構複雑なことをしていると思いませんか?




あとは、聴覚的な処理が苦手、というケースもあります。

\視覚優位・聴覚優位/

人は、「視覚優位」の人と、「聴覚優位」の人に分けられるそうです。

発達障害だと、それが顕著になるというか、極端になるようです。

聴覚優位の人は、

視覚的にものを捉えることは苦手で、何かの名称だけ伝えられても、それを視覚的なイメージにアウトプットすることが苦手です。

象を絵にしろと言われても、なかなか書けないけど、「鼻が長い」「長い牙がある」「鼻でものを掴む」「体が大きい」という情報はすぐに口に出せます。

耳で聞いたことを覚えることが得意です。

情報を小出しにされても、それを順を追って理解することが得意です。

道を教えられる時、言葉で覚えることができます。

視覚優位の人は、

視覚的にものを捉えるのが得意で、言葉でだけ伝えられた場合にそれをイメージすることが苦手です。

耳からの情報を処理することも苦手です。

情報を順番に小出しにされると、全体像がつかめなくて不安になります。なので、全体を伝えずに、最初の手順だけ伝えられると、いや、全部説明してよ。となります。

全体を捉えたいのです。

道を教えられる時、言葉で覚えることはできないので、イメージで覚えます。

なので、視覚優位の人は、電話の聞き取りが得意ではない場合があります。

電話応対では相手の話すスピードもコントロールできませんし、顔が見えない分、余計に素早い反応・対応も求められますし、焦って余計に聞き取り精度が落ちることもあり得ます。

\聴覚情報処理障害(APD)/

耳で聞いた音(音波)を、言葉として捉えることが苦手な人もいます。

伝音難聴、感音難聴と並ぶ聴覚障害の一つで、音は聞こえるけどそれを言葉として解釈・認識するのが苦手、聞いたことを覚えておくのが苦手、という障害です。

この場合、電話以外でも聞き取りが困難と感じる可能性が高いですが、電話の場合、「聞いたことを覚えておくのが苦手」という特徴が、電話での聞き取りを余計に困難に思わせる大きな原因になっていると思われます。

聴覚情報処理障害の人は、ワーキングメモリが小さいという背景もあるようですので、聞きつつメモを取って聞いたことを覚えてそれを伝える、ということは苦手だと思われます。

聴覚情報処理障害と、視覚優位が合わさると、余計に電話は苦手でしょうね。




雑音や大勢の中だと会話が聞き取れないのは発達障害が原因?

雑音が多い状況と、大勢の中での会話、というのは少し状況が異なりますので、分けて説明します。

雑音があると言葉が聞き取りにくい

雑踏や、カフェ、居酒屋、など、雑音の中(音が乱立する場所)で話を聞き取ることが難しいというケースもあります。

「騒がしいんだから、当然でしょ?」と思われるかもしれませんが、ここで取り挙げるのは単純に騒がしいからという問題ではないんです。

音が多いと、それ全てが同じレベルで聞こえてしまい、目の前の人や同じグループの人の声を選択して聞き取れない

ということです。

できる人は自然と普通にできることなのですが、選んで聞き取ることが難しい人もいるんですね。

\選択的注意力・選択的聴取力が弱い/

選択的注意とは、周りから聞こえてくる音の中から、自分の聞きたい音を分離して聞き取る能力のことです。

これがあれば、目の前の人との会話や、隣のグループの会話、外から聞こえてくる音、電話の音、別の部屋から何か呼びかけている声の、どれかに注目して聞き取ることができます。

他の音がうるさければ、もちろん聞き取りにくいですが。

有名なのは「カクテル・パーティ効果」というものです。

カクテルパーティーの最中でも、自分の興味のあるグループの会話を聴き取れるというものです。

この力が弱いと、あらゆる音の中から聞きたい会話だけ聞くということができません。

\あれこれ注意が向いて集中できない発達障害(ADHD)/

ADHD(注意欠陥多動性障害)の方は、選択的聴取が苦手、できない傾向が強いそうです。

それは、「注意欠陥」というだけあって、注意があれこれ向くので、何か一つに継続して集中することが難しいからです。

音が多い状況では、どれに集中したらいいかわからなくて、一般的に言えば集中すべきである自分が属するグループや目の前で行われている会話にだけ注意を向けて聴き取ることができないんです。

\聴覚過敏すぎる発達障害(ASD)/

ASD(自閉症スペクトラム障害)の人も、選択的聴取が苦手だそうです。

それは、聴覚過敏な傾向が多く、それを遮断する脳の機能を持ち合わせていないので、雑音が雑音のまま耳に全て聴こえてきて、うるさくて耳を塞ぎたくなり、とても会話なんてしていられない、という感じのようです。

大勢の中だと言葉が聞き取りにくい、会話についていけない

ADHD(注意欠陥多動性障害)の人は、前に挙げた「注意が色々なところに移りやすい」という特徴と、「人の感情を汲み取ることが苦手」という特徴のために、大勢だといろんな人の言葉や感情を追うのが大変だし、いろんな人がいろんなタイミングで話し出すのでどれに注意を向けたらいいかわからなくなります。

一つのことに注目したら、そこに気持ちや思考が向いてしまい、会話の流れについていけなくなることもしばしば。

というわけで、大勢での会話には向かないようです。




どういうケースとも言えないけど、何度聞き返しても聞き取れない場合がある

大勢での会話、電話、飲み会で、という状況から外れた場合でも、聞き取りが困難なケースも存在します。

相手の声が小さい場合や、もごもごこもりがちに話す場合、自分に向かって話してくれない場合に、聞き取れない場合があるというケースです。

ある特的の音域(周波数帯)の難聴

この場合、ある特定の音域に関する難聴という可能性があります。

でも耳は悪くないんだけど・・・と思うかもしれませんが、健康診断での聴力診断は、特定の音域しか検査しません。1000Hzと4000Hzです。

ここから外れた音域の難聴かもしれない、という可能性についてお話しします。

\日本語の音域/

日本語は、125Hz〜2000Hzだそうです。

高音難聴

加齢性の難聴は、高音から聴こえなくなるようです。

モスキート音は若いうちしか聞こえないのは、高音から聴こえなくなっていくからです。

ただし、モスキート音が聞こえなくても、難聴とは言われません。

生活には支障ないんです。

だいたい2000Hz〜8000Hzの音域が難聴の対象となります。

高音というのは、言葉の中で、「t」「k」「s」「h」「f」の子音にあたります。

子音が聞き取れないということは、母音しか聞こえないということで、そうすると、言葉を正しく聴き取ることはできませんよね。

また、声の高い女性や子供の声が聞き取りにくくなる場合もあります。

低音難聴

低音難聴というものも存在します。

低音難聴は、加齢によるものとは異なり、睡眠不足やストレスが原因ではと言われています。

20〜30代の女性に多いそうです。

内耳の問題で、感音難聴に属します。

低音難聴の場合も、言葉の中で低音が聞こえないため、音が正しく聞き取れない場合があります。

中音難聴

中音域の難聴というものも存在します。

健康診断の聴力検査ではひっからない音域での難聴ということです。

やはり、聞こえない音域があると、音が正しく言葉として認識しにくいです。

いずれにせよ、健康診断だけでは発見できないケースが多いため、耳鼻科で精密な聴力検査を依頼しなければいけません。

発達障害でもないし、特定の状況に限らないという場合、難聴を疑ってみて、一度精密検査してみるといいと思います。




人の話が聞き取れないのは訓練でどうにかなるのか?

聞き取れないというのは、繰り返し訓練すればできるようになるというものではないと思います。

ただ、子供の場合であれば、まだ言葉の学習が終了していない、言葉の習得が人より遅い、という場合もあるかと思います。

そういう場合には、言葉として音を聞くことに慣れるための訓練は必要かと思います。

赤ちゃん言葉を「可愛い」で済ませずに、正しい発音を聞かせ続ける、という地道な努力が必要となる場合もあります。

大人の場合、人の発する言葉に敏感になって、聞き取ろうとする努力、また、集中する努力、というのは必要かもしれません。

また、人が話し出したらその人に近くとか、その人の正面に移動するとか、もしくは「私は言葉を聞き取ることが苦手です」「耳が悪いんです」と周りに説明する努力・勇気、は必要かもしれません。

いずれにせよ、逃れられない問題でしょうから、当人にとってはかなり苦しいかと思います。

頑張って食らいつく努力と、ある程度自分の聞き取り能力を把握し受け入れる勇気、諦める勇気のいずれかを持って、自分で納得させることが解決法になるのではないかと、考えます。

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