乳アレルギーでも食べられる食品の見分け方(原材料表示の見方)

食物アレルギー持ちになってしまうと、食べられるものが限られてしまう上に、食品には多くの原材料が使われているため、何なら食べてもいいのかがよくわからなくて困ることがあります。原材料表示を見てもよく分からない場合もあって、買い物するのにものすごく時間がかかってしまうんですよね。今回は、原材料や食品名の書き方での、乳アレルギー持ちが食べてもいいか悪いかの判断についてお話しします。

乳アレルギーは何に反応して発症するか(アレルゲンは何か)

乳アレルギーというのは、主に牛乳に含まれる以下のタンパク質が原因で発症します。

  • αS1-カゼイン
  • β-ラクトグロブミン
  • α-ラクトアルブミン

牛乳以外でも、ヤギ乳、羊乳の中にも、わずかにアレルゲンが含まれています。ヤギも羊も「ウシ科」なので、乳の構造・組成がある程度似ているんですね。

ヤギや羊の乳は牛よりはリスクが低く、大丈夫という人もいますが、敏感な人だと反応してしまいます。

詳しくはこちらの記事に書かれていますので、興味があれば読んでみてください。

乳アレルギーとは(乳糖不耐症との違い)




で、アレルゲンの話に戻りますが、

上記の3つのアレルゲンのうち、

αS1-カゼインはカゼインの一種で、牛乳の「白い固形部分」に含まれています。「乳固形分」「無脂乳固形分」とかいうものが「白い固形部分」と言っているもので、ヨーグルトを液体と固体に分けた場合の固体の方です。

一方、β-ラクトグロブミンα-ラクトアルブミンの2つは、牛乳の「透明な液体部分」に含まれています。「透明な液体部分」というのは、前述したヨーグルトの透明な液体の方で、「ホエイ(ホエー)」と言われています。

カゼイン(白い固体) ホエイ(透明な液体) タンパク質全体に占める割合(%) 牛乳全体に占める割合(%)
αS1-カゼイン × 34 1.02
その他カゼイン × 46 1.38
β-ラクトグロブミン × 10 0.33
α-ラクトアルブミン × 4 0.13
その他 × 6 0.20




「乳」と付いていれば食べられない?

アレルギー持ちの人は、スーパーで食品を買うときに、原材料表示をよく確認してから買っているかと思います。でも、見たところでよくわからない、っていうことが結構あるんですよね。

「乳脂肪」とか「乳成分」とか言うことがありますが、「乳」と付いていることが、牛乳由来の食品、食品原材料であることを判断する一つの方法です。

ただし、ご存知かとは思いますが、「乳」と付いていれば「牛乳」由来かと言うと、そういうわけではないです。

「乳」と付いていて紛らわしい原材料・表記

乳化剤

「乳化」というのは「牛乳化」という意味ではなく、「本来混ざり合わないはずのものを一体化させる」という意味で、例えば水と油を一体化させるために使います。

マヨネーズは卵と油とお酢、ドレッシングは食用油とお酢を混ぜ合わせて作りますが、ただただ合わせても混ぜ合わらずに分離した状態のままです。

マヨネーズの場合は、卵黄に含まれる「レシチン」が乳化剤の役割を果たします。

ちなみに乳化の効果としては、以下の3つが考えられます。

  • 舌触りが良くなる
  • 分離しにくく品質が安定しやすい
  • 分離しにくく長期保存がしやすい
  • 消化吸収されやすくなる

そして、乳化剤の種類は、以下が挙げられます。

<合成乳化剤>

  • グリセリン脂肪酸エステル
  • ソルビタン脂肪酸エステル
  • プロピレングリコール脂肪酸エステル
  • ショ糖脂肪酸エステル
  • ステアリン酸モノグリセリド
  • オレイン酸モノグリセリド
  • 飽和脂肪酸モノグリセリド
  • 飽和脂肪酸ポリグリセリンエステル
  • 不飽和脂肪酸モノグリセリド
  • 不飽和脂肪酸ポリグリセリンエステル
  • ポリグリセリンエステル
  • クエン酸モノグリセリド
  • ジアセチル酒石酸モノグリセリド
  • ステアロイル乳酸ナトリウム
  • ステアロイル乳酸カルシウム(日本未認可)
  • モノグリセリドリン酸アンモニウム(日本未認可)

<天然乳化剤>

  • レシチン(大豆由来、卵黄由来)
  • サポニン(キラヤ由来)
  • カゼインナトリウム(牛乳由来)

この中で、天然材料を使った乳化剤については、それぞれの原材料のアレルギーの人は注意が必要です。

カゼインナトリウムは牛乳由来で、カゼイン中には、先述した通りアレルゲンの一つがありますので、避けたほうがいいです。

ちなみに、合成乳化剤でも、それを作る材料は天然由来だったりします。例えば「ステアリン酸モノグリセリド」「ステアロイル乳酸ナトリウム」「ステアロイル乳酸カルシウム」の「ステアリン酸」は牛脂から取れます。

ただし、(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)と書かれていない限りは、心配する必要はないと言っていいです。




乳酸

これは、最初に乳酸という物質が発見された時に、牛乳から見つかったので、「乳」とついていますが、牛乳から作っているわけではないので、気にしなくて大丈夫です。

乳酸は人間の体の中でも作られます。そこからも、乳由来とは限らないのが窺い知れますよね。

もしカッコ書きで(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)と書いていたら、食べないほうが無難です。

乳酸カルシウム

乳酸カルシウムは、溶けやすく、かつ味への影響が少ないため、スポーツドリンクなどに多く利用されているそうです。

これもまた、乳酸×カルシウムで、化学物質×化学物質なので問題ありません

(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)という表記がないか、注意は必要です。

乳酸菌

乳酸菌自体は「菌」であって、乳アレルギーのアレルゲンではありません

ただし、「乳酸菌飲料」のほとんどは牛乳に乳酸菌を培養したもの(ヨーグルトなど)をそのまま製品に混ぜたり、乳酸菌と牛乳を混ぜている可能性が高いので、乳酸菌がどう混ぜられているかをよく確認したほうがいいです。

例えば、「乳酸菌入り野菜ジュース」とかなら植物由来の乳酸菌を使用していて乳製品を使っていない可能性が高いですが、「野菜スムージー(乳酸菌飲料)」なら牛乳やヨーグルトを混ぜてある可能性が高いです。

経験則ですが、スムージーは緑色のもので野菜だけを使ってそうであっても、乳製品を混ぜていることが多いです。

要は、パッケージに惑わされずに、原材料表示をよく見ることが大事です。

豆乳

どう考えても、牛乳由来じゃないですね。

豆の乳、豆の絞り汁、です。

大豆アレルギーの人や、女性ホルモンに過敏に反応する人(大豆イソフラボンで具合悪くなる人)は、注意ですが、単に乳アレルギーという場合は気にしなくて大丈夫です。




豆乳ヨーグルト

豆乳ヨーグルトは、豆乳を使って出来ていて、豆乳自体は問題ないんですが、中には乳由来の原料を混ぜて普通の(牛乳の)ヨーグルトに寄せて(似せて)作っているものもあります。乳化剤に何を使っているかも要注意です。

これもまた、原材料をよく見て欲しいですね。

乳糖(ラクトース)

乳糖は、甘味料として使われていることが多いですが、乳由来です。

実際乳糖というもの自体はアレルゲンではないのですが、牛乳の中に、他の成分と混ざり合っているものから取り出します。

製造過程で完全にはアレルゲンとなるタンパク質を取り除けず、高度に精製されたものであっても約0.3%程度のタンパク質が残存するそうです。

実際、乳糖入りの食品を食べて症状が出た人がいるようです。

人によっては微量であっても重篤な症状を表しますので、アレルギーレベルが高い人は、乳糖を含む食品は食べないほうが無難です。

ちなみに、ヨーグルトの場合はヨーグルト自体に含まれる酵素が乳糖を分解するし、チーズは熟成が進むにつれて乳糖が分解されていって3年過ぎるとほとんどゼロになるそうです。

その他のタンパク質は残っているのでやっぱり食べたらアレルギー反応が起こるはずですけどね。

「乳」と付いていないけど食べちゃダメな原材料・表記

ホエイ

ホエイは、牛乳の液体成分です。

ヨーグルトから出てくる透明な液体が、ホエイですね。

ホエイには、前述した「β-ラクトグロブミン」「α-ラクトアルブミン」というアレルゲンが含まれています

ホエイは、「濃縮ホエイ」「ホエイパウダー」「タンパク質濃縮ホエイパウダー」と書いていたりします。

筋トレする人やダイエットする人が飲む「プロテイン」も、「ホエイプロテイン」と言って「ホエイパウダー」がよく使われます。

また、食品だけでなく、基礎化粧品にも含まれることがありますので、安心ができません。要注意な原材料です。

クリーム

クリームは、ほとんど牛乳由来と思っていいので、避けるのがベストです。

コーヒーに混ぜる「フレッシュ」も、クリームを使っていますね。生クリームももちろんクリームです。

カッコ書きで(乳製品)(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)と書いていたら確実ですね。

バター/バターオイル

「バター」は当然、牛乳から作られますので、食べちゃダメってわかりやすいですよね。

「バターオイル」ですが、これはバターの油脂の部分を取り出したもので、バターの上澄み液か、もしくはバターを溶かしてろ過した液のことです。

油脂部分だけなので、アレルゲンとなるタンパク質がかなり取り除かれているのですが、完全にではありません。

微量に含まれている可能性があるので、アレルギーレベルが高い方は避けたほうがいいかもしれません。

また、「バターオイル」は「ギー」「GHEE」という名前で売られていたりもします。

ギーなら大丈夫って人もいますが、人によります。

バターの中でも「グラスフェッドバター」なら大丈夫って言ってる人もいますが、そんなことはないですね。これも人によります。

私は、ギーは大丈夫だったけど、グラスフェッドバターは毎日摂っていたら調子を崩してしまいました。




ミルク

ミルク、なんてもう、言わずもがな、牛乳由来なのでダメですよね。

「◯◯ミルク」というものは、牛乳じゃないものの絞り汁である場合が多いです。例えば「アーモンドミルク」「ライスミルク」ですね。これらは牛乳由来ではないので大丈夫です。

ただの「ミルク」であれば、牛乳のことなので、乳アレルギーの方は避けるようにしましょう。

「アイスミルク」「バターミルクパウダー」なんてのものダメですね。

ラクト

「ラクト」と付くものは、牛乳由来です。

「ラクトアイス」「ラクトグルブミン」「ラクトアルブミン」「ラクトース」が乳由来の原材料だったり、乳製品、乳成分だったりします。

「乳又は乳等を主要原料とする食品」とは

一番謎なのが、「乳又は乳等を主要原料とする食品」や「乳等を主要原料とする食品」です。

これは、原材料の中に書いていたり、名称に書いていたりします。

はっきり言えよ。って思いますよね。

曖昧されている感じがどうにもモヤモヤして気になってしまいます。

どうも、ざっくりとした定義でいうと、「乳」とも「乳製品」と言えないけど、乳由来の原材料を51%以上含んでいるもの、をそう呼ぶようです。

いやあ、よくわからないですね。

でも、何がどう含まれているかはよくわからないけど、明らかに「乳」か「乳製品」は半分以上含まれていますから、アレルゲンは確実に入っていると言ってよくて、避けた方がいい食品です。

「乳」を使って培養する酵素もある

乳製品や、乳由来原材料ではないが、「乳」を培地として培養する酵素を食品製造過程で使うことがあります。

その場合、完全には乳を除去できなくて乳タンパク質が含まれてしまう場合があるかもしれません。

酵素名 培地 加工食品例
プロテアーゼ 小麦、大豆、乳 鰹エキス、肉エキス
グルタミナーゼ 乳、大豆 醤油、味噌
マルトトリオヒドラーゼ 乳、大豆、小麦 オリゴ糖
デキストラナーゼ 砂糖
アミラーゼ 乳、大豆 食酢
ホスホリパーゼ 植物油
トランスグルタミナーゼ カマボコ、豆腐、麺

実際、これらの酵素が食品中にどれだけ残るかというと、原材料表示に載せなくてもいいほどの濃度しか残らないとされているので、気にしなくても大丈夫かと思います。

表示義務はなく、表示するかの判断は、製造者側、販売者側に委ねられています。

もし「(原材料の一部に乳を含む)」と書いていて、それっぽい原材料が載っていない場合もよくあって、購入するかどうか迷ってしまうこともあると思います。

培地に使われているから書かれているというケースもゼロではないと覚えておくといいかもしれません。




結論

結論としては、基本は「乳」と書いていたら怪しむ、という判断で大丈夫ですが、それに限らないものもあるので、どれならダメか、どれなら大丈夫かを、覚えてしまうかリスト化して持っておくのが一番だと思います。

以下にまとめておきました。

乳アレルギーが食べちゃダメなもの

<「乳」又は「乳製品」と言っていいもの>

生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳

加工乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、はっ酵乳

無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳

脱脂粉乳、全粉乳、クリームパウダー(乳製品)、加糖粉乳、調製粉乳

ホエイパウダー(乳製品)、タンパク質濃縮ホエイパウダー(乳製品)、バターミルクパウダー、濃縮ホエイ(乳製品)アイスクリーム類

乳酸菌飲料、乳飲料

クリーム(乳製品)、バター、チーズ

※上記の定義は、乳等条例により定められている。

※上記に分類しきれない乳由来の食品は「乳又は乳等を主要原料とする食品」となる。

<「乳」と表記しなくていい特定加工食品>

生クリーム、ヨーグルト、アイスミルク、ラクトアイス、ミルク

<上記二つの名称を含んでいるためあえて「乳」と表記しなくていい食品>

アイスクリーム、レーズンバター、バターソース、ガーリックバター、◯◯チーズ、コーヒー牛乳、牛乳がゆ、フルーツヨーグルト、ミルクパン

乳アレルギーが要注意なもの

バターオイル、ギー※1

山羊乳、めん羊乳、シェーブルチーズ※2

乳糖(ラクトース)

豆乳ヨーグルト、乳酸菌、乳化剤※3

※1:バターオイル、ギーは、アレルゲンを大部分取り除いていますが、アレルギーレベルの高い人は十分に反応すると思います。レベルの低い人であれば、大丈夫な場合もあります。

※2:シェーブルチーズは、山羊乳から作られるチーズです。基本的に、山羊乳とめん羊乳はアレルギーを起こしにくいと言われていますが、これもレベルによるので要注意です。

※3:豆乳ヨーグルト、乳酸菌、乳化剤については、(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)(乳製品)というカッコ書きがあったらNGで、なかったらOKです。

乳アレルギーが食べても大丈夫な紛らわしいもの

乳酸、乳酸カルシウム

豆乳、ライスミルク、アーモンドミルク

乳化剤(カゼインナトリウム以外)※

※乳化剤は、カゼインナトリウム以外なら食べても大丈夫です。

具体的には「レシチン」「サポニン」はOK。

(乳由来)(原材料の一部に乳を含む)(乳製品)というカッコ書きがあったらNGです。

ちなみに、フレッシュチーズの方が、熟成チーズよりも危険度が高いです。

生クリームは当然食べられないのですが、どうしても食べたい人用に、乳製品を使わない代用生クリームレシピを置いておきますので、見てみてください。

乳製品不使用 代用生クリームレシピ

以上となります。

みなさんの食品・食材選びの手助けになれば幸いです。

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