インフルエンザ薬はあり?なし?効果と副作用、飲むタイミング、種類まとめ

インフルエンザ薬での死亡事件、異常行動などが報道されて、インフルエンザ薬に対する不信感が強まっている感がありますが、本当にインフルエンザ薬は危険なのでしょうか?

その効果や副作用、効果を発揮させる飲み方(タイミング)、製品別の特徴、子供に飲ませる時の注意点など、正しい知識を持って自らや家族を守るための情報をお届けしたいと思います。

インフルエンザ薬の効果

インフルエンザ薬、って、飲むとどうなる薬でしょうか?

インフルエンザを治す薬?

インフルエンザの症状を和らげる薬?

インフルエンザウィルスを殺す薬?

ざっくりいうと、インフルエンザ薬は、「インフルエンザウィルスが身体に広がるのを防ぐ薬」です。

症状を和らげるわけではありません。

あれ?インフルエンザ治してくれるわけでもなければ、症状も軽くならないの?

じゃあ飲む必要がないのでは?

と思ってしまいませんか?

直接症状を和らげるわけではありませんが、

インフルエンザウィルスが増殖しないことによって、インフルエンザの症状が酷くなる(重症化する)ことを防ぐ効果があるんですね。

ウィルスが増殖すると身体中に広がり、それを駆除するための免疫機構が奔走・奮闘しますが、その免疫機能を補うためや高めるために、発熱したり、体のあちこち(筋肉や関節)を痛くしたり、痰や鼻水を増やしたりします。

つまりインフルエンザの症状は、ウィルスが増えれば増えるほど、酷くなるということです。

なので、薬でウィルスの増殖を抑えることで、免疫機構の負担を減らし、症状が酷くならずにすむということですね。

ウィルスが広がらないので、症状が改善するまでの時間も、短縮することができるようです。

通常だと、発熱以降80時間で症状が治まるそうですが、薬を飲むことで、それが最大50時間ほどまで短縮されるのだとか。

復帰が1〜2日早くなるということですね。

復帰といっても、あくまで体調の話で、症状が治まったとしても規定の期間内は通勤・通学してはいけないですけどね。

体が早く楽になるのはありがたいことです。




インフルエンザ薬の副作用・リスク

インフルエンザ薬を飲むことで、何かリスクはあるのでしょうか?

薬によって副作用が異なるので、詳細は以下にあるそれぞれの項目をみていただきたいです。

共通して主にみられる副作用としては、

下痢、ALT・AST上昇(肝細胞破壊)、悪心・胃腸炎、アナフィラキシーなどアレルギー症状、頭痛

物によって場合によってみられるものには、

耐性ウィルスの発現、気管支攣縮、呼吸困難、めまい、発熱、表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑

インフルエンザ薬は飲むべきか?

インフルエンザ薬は万能ではありません。

インフルエンザウィルスをやっつけて体を治すのは、あくまで自身の体の免疫機能です。

なので、薬を飲むよりも、室温を暖かく(20〜25℃)湿度を高く保つとか、栄養のある食事を摂って、安静にして、睡眠をしっかりとるなど、しっかり休養をとることの方が大事だったりします。

しかし、

インフルエンザ薬は、ウィルスを殺しはしませんが、抑え込むことで、症状の早期改善、早期復活に役立ってくれます

長くは休めない、または規定の期間でしっかり治してすぐに仕事・家事育児・勉強に復帰しなきゃいけない、という場合には、薬を飲んだ方がいいでしょうね。




インフルエンザ薬はいつ飲むのが効果的か

さてさて、インフルエンザ薬は、いつ飲んだらいいのでしょうか?

たいていの薬は、症状が出てから(発熱してから)48時間以内に飲まないと効果がない、もしくは効果が発揮されないとされているようです。

それは、インフルエンザウィルスは発症から48時間で増殖のピークを迎え、それ以降は増殖しなくなっていくからです。

インフルエンザ薬は「ウィルスを体内に広めない(増殖を抑える)」効果がありますので、ウィルスが増殖しきる前に飲まないと意味がないんですね。

48時間というと、丸2日間ありますから、熱が上がったな〜と思った翌日にでも病院に行けば十分間に合うのかなと思います。

ついでに知っておきたい解熱剤を飲むタイミング

インフルエンザといえば高熱が出るのが特徴ですから、解熱剤が処方されることが多い病気かと思います。

しかし、解熱剤の服用には注意が必要です。

インフルエンザになると、38℃以上の高熱になることがありますが、先述した通り、発熱は免疫を助ける効果があるんです。

なので、熱が上がったからといってすぐに解熱剤を飲んで熱を下げてしまうと、インフルエンザウィルスを殺しにくくなりますし、免疫も働きにくくなります。

楽になろうとして飲んだ結果、症状が長引くことになってしまう可能性があるんですね。

なので、解熱剤を飲むとしたら、38.5℃以上になりそうだったら、くらいがいいのかなと思います。

38.5℃以上だと、脳への悪影響が起こる可能性が出てきます。

ご存知とは思いますが、42-43℃が肉体の限界と言われていますし、その温度に達しないように調整する必要はあるんですね。




インフルエンザ薬の種類

インフルエンザ薬には、効果や飲み方によって分類があります。

効果による分類

インフルエンザウィルスの増殖を、細胞内に留める効果

まずは、

インフルエンザウィルスの増殖は抑えないけど、細胞外に出ていくのを抑えることで、結果的にウィルスを身体中に広めるのを抑えることができる

というものです。

これが、今までのインフルエンザ薬が持つ効果となります。

インフルエンザウィルスの増殖自体を抑える効果

新しく出てきたインフルエンザ薬は、今までとは異なり、

インフルエンザウィルスの増殖自体を抑える効果があります。

なので、早く飲めば飲むほど、重症にならずに済むし、早く治るんですね。

飲み方による分類

飲み方も、薬によって様々です。

投与回数

投与回数が、1回で済むものと、1日数回x数日間に及ぶものとがあります。

一回で済むのは、イナビルと、ゾフルーザ、ラピアクタです。

1日2回x5日間飲むのが、リレンザと、タミフルです。

一回で済むのは便利ですよね。

一方で、1日2〜3回を5日間飲み続けるのは、「ちょっと面倒」です。

また、「もうだいぶ良くなったし」と、途中から飲まなくなる人も多いようですが、そうすると、せっかくの薬の効果も発揮できないようですよ。

認知症や痴呆の方など、きっちり決められた通りに飲むことが難しい方もいるので、そういう場合には一回で済むタイプの方がいいでしょうね。

投与方法

錠剤や顆粒剤を飲むものと、粉末状の薬を口から肺へ吸入するもの、点滴で投与するものがあります。

錠剤もしくは顆粒剤が、タミフル、ゾフルーザです。

粉末剤(吸入)が、イナビルと、リレンザです。

点滴タイプが、ラピアクタです。

吸入タイプなんてものもあるんですね。

喘息の薬を常用している人であれば慣れているかもしれませんが、肺に満たすくらいしっかり吸い込むのはなかなか難しそうです。高齢者や小さいお子さんにはなかなか難易度が高いですね。

ちなみに、喘息持ちの方は、吸入タイプのインフルエンザ薬は処方されないようです。肺には喘息の薬を優先的に入れたいからと思われます。

点滴タイプは大げさに思えるかもしれませんが、喘息持ちの人や、薬を吸うのも飲むもの難しい患者さんには有効だそうです。15〜30分で済むそうなので、時間的リスクもそう大きくないですね。




インフルエンザ薬の商品別の特徴

上で見た特徴を元に、薬ごとの特徴を見ていきたいと思います。

インフルエンザ薬リレンザ

一般名:リレンザ

正式名:ザミナビル水和物

開発元:グラクソ・スミスクライン社

販売開始:2000年(日本)(世界では1990年)

服用方法:吸入(粉剤)

服用回数・頻度:1日2回x5日間

服用開始のタイミング:発症から48時間以内(*)

効果発現期間:

対応するインフルエンザ型:A型、B型

予防投与:非推奨(毎日飲む必要ありのため)

健康被害:アレルギー性ショック発症(2013年発表_2009年〜2012年で3名、うち1名死亡)

耐性ウィルス:タミフルよりもできにくい

効果:インフルエンザウィルスを感染細胞内に留める

(*肺に吸入するタイプで、気道以外に感染が広がってしまった後の効果は期待できないので、できるだけ早く服用する必要があるとのこと)

リレンザは、日本では初めての抗インフルエンザウィルス薬です。

日本では2000年から販売開始し、2001年から保険適用となっています。

2019年現在で、販売開始から19年目とのこと。

吸入という特殊な服用方法から、後継の錠剤タイプに押されて利用率が落ちていたのが、2006〜2007年にタミフル(錠剤)の健康被害(因果関係は不明確)や耐性ウィルス出現の問題により、リレンザのニーズが復興しました。

しかし、2013年に発覚した健康被害(死亡あり)と、2014年に公開された臨床データから、今後使い続ける価値はあるのかどうか、見直しが必要との見解がでているようです。

個人的には、リレンザは、健康被害のイメージが結構強いですね。

加えて、吸入を1日2回、5日間も続けなければいけないというのが、かなりネックに思えます。




抗ウィルス剤(アマンタジン塩酸塩)

一般名:シンメトレル

正式名:アマンタジン 塩酸塩

開発元:ノバルティス社

販売開始:1998年(日本)(世界では1959年)

服用方法:内服(錠剤)

服用回数・頻度:1日1〜2回x7日以内

服用開始のタイミング:発症から48時間以内

効果発現期間:

対応するインフルエンザ型:A型

予防投与:非推奨

健康被害:胎児に催奇形性

耐性ウィルス:発現確率大

効果:増殖過程のうち「脱核」を阻止し、増殖を抑える

その他処方対象病:パーキンソン病、脳梗塞後遺症

「日本で初めての抗インフルエンザ薬はリレンザ」と紹介しましたが、世界的に見ても、このアマンタジン塩酸塩の方が、先にインフルエンザに用いられています。

効くのはA型に対してのみのようですが、アメリカでは1959年に開発されてからずっと抗ウィルス薬として使用されてきました。

偶然別の病気(パーキンソン病)に効くことが発見されてからは、日本ではその別の病気向けの薬として1975年に導入され、インフルエンザに対して処方されるのは1998年からでした。

一般的には、抗インフルエンザ薬としての認識は薄く、やはりリレンザが初めてと思っている人が多いようです。

耐性ウィルスが高確率で発現することから有効性が評価できないとして、2006年に使用が推奨されなくなりましたので、おそらくインフルエンザに対して処方されることはまずないかと思われます。




インフルエンザ薬タミフル

一般名:タミフル

正式名:オセルタミビル リン酸塩

開発元:ロシュ社

販売開始:2001年(日本)(世界では1996年)

服用方法:服用(カプセル剤・顆粒剤)

服用回数・頻度:1日2回x5日間

服用開始のタイミング:発症から48時間以内

効果発現期間:継続して服用することで効果を発揮

対応するインフルエンザ型:A型(B型には効果が薄い

予防投与:可能

健康被害:異常行動多数確認(12・13歳が窓から飛び降り、14・17歳が道路に飛び出て死亡)

耐性ウィルス:発現あり(大人で4%、小児で0.3%)

効果:インフルエンザウィルスを感染細胞内に留める

副作用:嘔吐、腹痛、下痢、鼻血、精神・神経症状(意識障害、異常行動、せん妄、幻覚、妄想、痙攣など)の疑い

タミフルの健康被害、というか、異常行動は有名ですよね。

特にお子さんが服用した場合に異常行動が確認されるとのことで、2007年に厚生労働省から「10歳以上の未成年(19歳以下)には原則として使用を差し控えること」との警告文掲載の指示が出ました。

しかし、そもそもインフルエンザそのものに、異常行動を含む精神・神経症状がみられるそうで、タミフルとの因果関係ははっきりしていないそうです。

どのインフルエンザ薬にも、類似薬にこういった症状が確認されるので注意、みたいな注意喚起はされています。

インフルエンザ薬としてタミフルが多く処方されたから、異常行動とタミフルがセットになるケースが多かっただけかもしれませんが、因果関係がはっきりと否定されたわけではないし、いざ起こってからでは遅いということで、注意が必要であることは間違いないですね。

そもそもインフルエンザの時には、お子さんだけで放置せず保護者が監視するのが推奨されています。

タミフルは2009年に世界保健機関の「必須医薬品」にラインナップされたが、2017年には「補足的な薬」に格下げされたそうです。

重篤な入院患者でインフルエンザウィルスの感染が疑われる場合のみの使用に制限

かつ

使用のを支持するようなさらなる証拠がなければ医薬品一覧からの削除がありえる

との見解が発表されたようです。

近いうちにタミフルがなくなる日も来るかもしれません。




インフルエンザ薬ラピアクタ

一般名:ラピアクタ

正式名:ペラミビル水和物

開発元:バイオクリスト社

販売開始:2010年(日本)

服用方法:点滴(液剤)

服用回数・頻度:1回

服用開始のタイミング:発症から48時間以内

効果発現期間:タミフルより早い

対応するインフルエンザ型:A型、B型

予防投与:未確認

健康被害:アナフィラキシーショックでの死亡例

耐性ウィルス:発現あり

効果:インフルエンザウィルスを感染細胞内に留める

副作用:下痢、アレルギー症状

点滴なので、生まれて数ヶ月の乳児から使用することができることが何よりの利点かと思います。飲み込んだり吸い込んだりが困難な方にも使えます。

ただし、重篤なアレルギー症状も確認されており、その投与には十分な注意が必要なようです。




インフルエンザ薬イナビル

一般名:イナビル

正式名:ラニナミビル オクタン酸エステル水和物

開発元:第一三共社

販売開始:2010年(日本)

服用方法:吸入(粉剤)

服用回数・頻度:1回

服用開始のタイミング:発症から48時間以内

効果発現期間:即

対応するインフルエンザ型:A型、B型

予防投与:可能

健康被害:特になし

耐性ウィルス:なし

効果:インフルエンザウィルスを感染細胞内に留める

副作用:下痢、ALT(GPT)上昇、めまい、胃腸炎、頭痛、悪心、蕁麻疹、発熱

リレンザにつぐ吸入タイプの抗インフルエンザ薬です。

吸入は1回で済む、ということですが、来院1回した際に投与し、再来院・再投与が要らないので1回としていますが、実際には数回に分けて吸い込みます

というもの、大人(10歳以上)は1回に40mgを投与する必要がありますが、本剤は10mgずつに分かれており、それを10mgずつ吸い込むので、最低4回吸い込むことになります。

吸い残しを防ぐために再吸入する場合もあるので、最大8回吸い込むこともあります。

ちょっと複雑なんですが、リレンザ同様、吸入タイプの薬は医師や看護師の前で吸い込むことになるので、飲み忘れがないし、ちゃんと飲めなかった判断されれば、その場で適切な追加処理をしてくれるでしょうから、安心ですね。

副作用は確認されているものの、重大な健康被害は特に確認されていないようですし、吸い込めば直接患部(気管支や肺)に届く薬なので効きやすく、なかなか使える薬な気がしますね。




インフルエンザ薬ゾフルーザ

一般名:ゾフルーザ

正式名:バロキサビルマルボキシル

開発元:シオノギ製薬社

販売開始:2018年(日本)

服用方法:服用(錠剤・顆粒剤)

服用回数・頻度:1回

服用開始のタイミング:発症から48時間以内

効果発現期間:24時間

対応するインフルエンザ型:A型、B型

予防投与:効果未確認

健康被害:未だなし

耐性ウィルス:発現率高い(大人で10%、小児で23%)

効果:インフルエンザウィルスの増殖を抑制

副作用:下痢、頭痛、ALT(GPT)増加、AST(GOT)増加

2019年2月現在、販売開始から約1年たちました。

主に消化器と肝臓に副作用が現れるようです。

また、耐性ウィルスの発現率の高さが特徴的ですね。小児で2割というのが気になります。

お子さんへのインフルエンザ治療の難しさが、長年の課題のように思えます。

いずれにせよ、まだ臨床データが少ないことが怖いところです。

問題はありつつも臨床データが多く、前もってリスクを把握した上で処方できるため、今までの薬の方が安心ではありますね。

詳しくは以下の記事も確認してみてください。

>>>ゾフルーザについての特集記事




インフルエンザ薬を子供に飲ませる時の注意点

  • 精神・神経症状の可能性に注意
  • 2日間は監視を怠らない
  • 自力では窓の外に出られないようにする
  • 年齢の異なる子供間で薬を共有・混同しない
  • 高熱になりすぎない限りは、薬に頼らないことも検討
  • リスクを把握、理解した上で服用
  • 用法用量を守り、飲み残しのないようにする

こんなところでしょうか。

どんなインフルエンザ薬でも、飲んだら治るということはありません。

改善までの時間を短くするという、あくまで補助的なものでしかないんです。

実際に治すのは自己治癒力ですので、環境を整え、養生して、無理せずにしっかり休むことが一番大事です。

また、指示通りに飲み切って、他の人に流用したりしないことです。

数日間飲み続けることで効果を発揮するものもありますので、自己判断で服用をやめると、その効果を発揮できない可能性があります。

また、薬というのは商品ごとに特性があり、本人の状態に合わせて処方されますし、年齢によって容量も異なります

余ったから(本来、余ることはありえないですが)、遅れて発症した別の子に飲ませちゃおう、という勝手なことをすると、足りなくて効かないくせに耐性ウィルスだけ作られて治療が長引いたり、多すぎて逆に毒になったりします。

タミフルが「補助的な薬」に格下げになったという話をしましたが、そもそもインフルエンザ薬は補助的なものだと考えた方がいいかもしれません。

しかし、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、吸入剤(粉)、点滴薬と、様々な形態の薬が出て来るのはいいことですね。

今まで気にしたことはなかったのですが、喘息の人は吸入タイプの薬が飲めない可能性があるとか、高齢者や小さい子に吸入は難しいとか、そういうことを考えたことすらなかったです。

選択肢が増えて、どうしても薬を飲んだ方がいい状態の人を一人でも助けることができるなら、ありがたいことです。

>>>新薬ゾフルーザについての記事

>>>インフルエンザ予防接種についての記事

>>>インフルエンザ脳症についての記事

>>>インフルエンザの種類・潜伏期間などまとめ記事

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