「睡眠負債」とは何?セルフチェック。寝溜めと昼寝は返済・解消に有効か?

2017年流行語大賞のトップテンに受賞した「睡眠負債」。

「睡眠負債」とは何か、昼寝や寝溜めで解消されるようなものなのか。現代人にとって深刻な問題となっている「睡眠」問題について詳しく説明していきたいと思います。

「睡眠負債」とは何か?

2017年6月にNHKの番組でも取り上げられて何かと話題の「睡眠負債」。

2017年流行語大賞(2017年12月発表)トップテンにも選ばれ、その言葉に深く関わる人物としては、早稲田大学の枝川義邦教授が発表・表彰式に出席されました。

2017年9月の金スマでも取り上げられていましたね。




『スタンフォード式 最高の睡眠』”sleep debt”

英語では「sleep debt」と言い、睡眠研究の総本山であるスタンフォード大学の研究者によって提唱された言葉です。直訳されて、日本では「睡眠負債」として使われています。

同大学で長年トップ研究者をされている西野精治氏著の書籍『スタンフォード式 最高の睡眠』でも紹介されており、NHKでの放送後に大きく取り上げられています。

毎日少しずつの睡眠不足でも借金(負債)のように積み重ねられて、債務超過により癌や認知症、アルツハイマーなど重大な疾病に繋がる、という考えです。

徹夜や、極端な睡眠時間減少は問題視されやすいのですが、数十分〜2時間ほどの睡眠不足の「蓄積」こそが心身に悪影響を与える、ということで話題を呼んでいます。

「睡眠負債」は、ちょっとずつの積み重ねで、命を縮める危険性のある深刻な問題なのですね。

「睡眠負債」の有無=「眠気」「寝不足感」の有無?

「睡眠負債」があるかどうか、日々が睡眠不足かどうかはどう判断できるのか?

一般的に、朝起きるのが辛かったり、日中に眠気が酷かったりすると、「寝不足」を疑うかと思います。

それ自体は間違いではありません。睡眠習慣に、何らかの問題が考えられることは確かかと思います。

ただし、「睡眠負債」とは、自覚できるかどうかは、関係ないそうです。




「睡眠負債」とは、無自覚の借金。

「睡眠負債」は、「適正な(必要な)睡眠時間に足りない時間」と言えますが、足りていないのに本人にその自覚がないというケースが多く見られるようです。

プラセボ効果にも似たことことかなと思いますが、「睡眠時間は6時間で充分」と思っている人は、7時間だと寝すぎた、5時間だと少し寝足りなかった、6時間なら丁度いい・よく寝た、と思ってしまうものらしいです。

逆に、「眠れない・・・」と悩んで不眠外来を訪れる中高年の方の場合などは、加齢によって活動も少なくなり多く寝る必要がなくなっているのに、若い時のままに「7時間寝なきゃ!」と思い込んで、「6時間しか寝られなかった」、「朝5時に目が覚めてそれ以降寝られなかった」など、寝不足ではないのに寝不足と思い込んでいるケースもあるとのことです。

要は、思い込みによって、寝不足かどうかの自覚は変わってくるので、実態とは異なる可能性が高い、ということですね。

職場や大学でも、「いや〜全然寝てないわ〜笑」とか言いながら、元気そうな人はいますよね。

逆に、「3時間くらいで十分。6時間以上寝るとか、贅沢だよ。寝なかったらその時間好きなこと出来るから起きていちゃう。」とか言いながら、顔色悪いし通勤電車の中はずっと寝てる、って人もいます。




潜在的睡眠不足(potential sleep debt)

「潜在的睡眠不足」とは、国立精神・神経医療研究センターの三島和夫氏らが実験の結果によって提唱されている言葉です。

三島氏らは、睡眠不足の自覚のない平均睡眠時間7時間22分の20代男性15人の被験者に、9日間、毎日12時間外界の刺激と遮断した空間で、寝られるなら寝られるだけ寝てもらう、という実験をしました。

被験者たちは、二度寝、三度寝の時間も含めて、初日には平均で10時間33分と、普段より平均3時間も多く寝たとのことです。これは、週末の「寝溜め」に相当する、睡眠不足を解消するための反応と判断されました。

その睡眠時間は徐々に減っていき、約7日で安定したとのこと。試験期間中の睡眠時間の推移から、必要睡眠時間は、平均8時間25分と算出されました。

普段の睡眠時間は平均7時間22分ですので、1日1時間も睡眠時間が足りなかったのです。

ひと月では30時間もの負債が溜まることになります。

これって結構大きくないですか?30時間を返済するってかなり大変。

しかも、各被験者は、普段は特に体調不良を感じるわけでもなく、寝不足の自覚がなかったというのが驚きです。20代ということですので、若さの成せる技でしょうか。

知らない間に、自覚できない疲れや健康リスクが溜まり続けるって、怖いですよね。

20代のうちは大丈夫でも、30代になってからガクッと影響が出そうです。




潜在的睡眠不足蓄積の影響

先述した三島氏らの実験では、実験前と実験後の、糖代謝、細胞代謝、ストレスなどに関わる内分泌機能(空腹時の血糖値、基礎インシュリン分泌能力、甲状腺ホルモン濃度、副腎皮質刺激ホルモン濃度、など)の比較をしています。

実験での睡眠不足解消後、上記の内分泌機能が改善され、より理想的な数値に補正されたそうです。

自覚はなくとも、睡眠不足の蓄積が、心身機能に悪影響を与えていたことが証明されたということですね。

以上のことからも分かる通り、本人が寝不足と思っているかどうか、自覚があるかどうかは、睡眠不足や睡眠負債とはイコールではないのです。

むしろ、自覚がないところが怖いところですよね。

気づいたら借金だらけで、首が・・・どころではなく、命が回らない事態に陥っているかもしれません!

元気だと思っていた人の「突然死」というのは、案外、この「睡眠負債」が関わっているのかもしれませんね。




適切な睡眠時間とは?

8時間がいいとか、6時間で充分とか、いや、7時間が丁度いいんだ、とか、世の中の良しとする「適正睡眠時間」は、TV番組などに左右されて変動しがちです。

8時間がいいと言われても、そんなに眠れない。6時間で充分と言っても、それじゃ眠いから10時間くらい寝たい。いや、眠いけど私は4時間でも平気だよ?みんな寝すぎだよ。

と、人によっても言うことや捉え方は千差万別。

ますます解らなくなりますよね。

一体、適切な睡眠時間とは何時間なのか・・・?

・・・これは、正直、人によって違う、としか言えません、、、

「ショートスリーパー」や「ロングスリーパー」、「朝型人間」や「夜型人間」など、人によって遺伝子レベルで決められたもののようです。

何時間が適正か、必要かは、先述したように、特殊な環境で10時間以上の睡眠時間を確保した状況で7日前後以上睡眠時間を記録しなければ導き出せません。

睡眠負債と適正睡眠時間のセルフチェック

もし自分で判断するとしたら、

週末に目覚ましをかけず、遮光カーテンを引いた状態で寝て

平日より長く睡眠をとっているようなら睡眠負債が溜まっている

(二度寝、三度寝の時間も合計する)

平日と同じ睡眠時間で二度寝もしないようなら、睡眠負債は溜まっていない

睡眠負債が溜まっているようなら、普段もう少し睡眠時間を確保するようにする。

睡眠負債が溜まっていないようなら、今のままの睡眠時間のままが適正睡眠時間。

というやり方なら、可能かと思います。




そのほか、簡単なチェック項目を示しておきます。

これで一つでも当てはまれば、睡眠負債を抱えている可能性があるとのことです。

□ 午前中(10~12時)に眠気を感じる

□ 朝起きたときにだるさを感じる、頭がぼんやりする

□ 平日の睡眠時間は6時間未満だ

□ 帰りの電車(深夜以外18時から21時くらい)で眠くなる

□ 休日にアラームを使わないと2時間以上寝坊する

こういうの、誰しも一つは当てはまりそうですよね?

休日に寝すぎるのも、「起きる必要がないから」とか「寝るのが好きで、寝たくて寝てるだけ」とか、自分では大して気にしていないケースも多々ありそうです!

私が意外だったのは、午前中に眠い、という項目ですね。どうも普通の人は14時頃以外は眠くないものらしいです。

私、午前中も、午後の13時〜16時も、夜の18時〜20時あたりも眠いです。

全部!!! 一日中!!!! 眠い・・・・・っ!!!!!!

はい。まんまと睡眠負債地獄ですね。

逆に、日中眠くないとびっくりします。

皆さんはこんな状態にならないようにしましょう。。。。。




子供の睡眠負債は、より深刻な問題

日本の子供は、大人以上に、海外と比べた睡眠時間が圧倒的に少ないそうです。

(乳幼児比較・・・日本:11時間強 海外:13時間超(最長))

幼年期、少年期は、精神も身体も身体機能も、発達途上です。ここで充分な睡眠が取れないと、大人の場合よりも、深刻な影響が将来出てくると言われています。

子供の睡眠時間が減る原因としては、塾、宿題、習い事、SNSなどと言われています。

が、私は親との関係性の問題でもあると思っています。

私の実体験ですが、私は子供のころ、なぜかどうしても夜寝るときに自分の部屋で寝るのが嫌で、両親が寝室に移動するまで一緒にテレビのある部屋にいて、眠気を我慢しながら一緒に過ごしていた期間がありました。小学生の間の数年間だったかと思います。

両親は、その頃ハマっていた海外ドラマを深夜放送で観ていました。(ER緊急救命室)

眠くて眠くて、でも起きていなきゃと思って、うつらうつら目はつぶっているけど耳は聞こえている状態でいたり、ガクッと寝落ちては起きて寝落ちては起きてを繰り返したり、結局自分の部屋に移動するのは23時を過ぎていました。

私もそのドラマが好きだったのですが、起きていた理由はそれだけではなかったと思っています。

本当に小さい時のことなので、はっきりとは覚えていませんが、そのドラマを観ているときは、基本的に両親は喧嘩せず団欒と言えるような時間を過ごしていたように思います。その時間を一緒に過ごすことが、おそらく私にとっては貴重で逃せない時間だったのじゃないかと思います。

私以外にも、親との接触時間が少ない場合に少しでも親との時間を過ごそうと、もしくは親同士の関係が良好でない場合に自分がいることで親が喧嘩しないための鎹(かすがい)になるようにと、自主的に無理やり夜更かしをしている子供もいるのではないか・・・。

単に子供の問題と考えずに、親子の問題、家族の問題として考えてみてはいかがでしょうか。

子供の睡眠時間については、なかなかチェックしづらいでしょうが、朝なかなか起きてこない場合には、睡眠時間が足りていない、もしくは時間は充分だが良質な睡眠が取れていない可能性があります。

子供は欲求に正直なので、遊びなど睡眠以外の欲求に従って夜更かししてしまいます。授業中に眠ればいいと思っていたり、自分が睡眠不足でも気づかなかったりして、ケアできないことの方がほとんどでしょう。

なるべく、普段の子供の様子に気を配って、居眠りや寝坊を「怠け」「だらけ」などでは片付けずに、向き合ってあげてみてほしいです。




睡眠負債の解消法は?

週末・休日の寝溜めでは、解消しない。

週末、休日に寝だめすればOKか、といえば、それで万事解決とはなりません

先述した国立精神・神経医療研究センターの三島和夫氏らの実験の結果、脳波で見る「睡眠不足」は、2日ほどの寝だめで解消することがわかりました。

ただし、内分泌機能(心身機能)の回復には、さらに日数を要したとのことです。

睡眠負債の怖いところは、「睡眠不足は蓄積する」という部分だけではありません。

その「蓄積によって心身に悪影響を及ぼす」という部分まで含めてが睡眠負債の怖いところです。

昼寝では、解消しない。

午後の昼寝はどうか。

20分程度(30分以内)の昼寝は、午後の仕事のパフォーマンスUP(パフォーマンス維持)、眠気の解消には役に立ちますが、前項(寝溜め)でも説明した通りに、睡眠負債の問題を解決するには至りません

職場で昼休みの食事後に、デスクに突っ伏したりリクライニング使って仰向けになったりで、寝ている男性多くないですか?!

昼寝の効果については、皆さんおそらく実感しているのでしょうね。

寝ないより、寝た方が断然マシですからね!

寝た方がパフォーマンスが維持できる、とか実感できているのであれば、積極的に取りたいところではあります。

ただし、残念ながら負債の返済には、ならない・・・・・。




寝溜めと昼寝の功罪

寝溜めは睡眠不足の解消に、昼寝は眠気の解消に、それぞれ役立ちますので、否定はできません。お昼ご飯後に昼寝しないと午後持たないんだ、という人は結構います。

しかし、寝溜めも昼寝も、やりすぎると体内時計を狂わせ、睡眠サイクルを崩し、さらに睡眠負債を抱える結果になる可能性も秘めた諸刃の剣なのです。

ちなみに、芸人の武井壮さんは、基本的には睡眠時間が短く45分しか取らず、その代わり時間が空いたときにさっと仮眠を取るという細切れの分割睡眠で睡眠不足に対処しているそうです。武井さんの場合、眠りに落ちてすぐに深い深いノンレム睡眠に入る特異体質で、45分でも十分に疲労回復できるそうです。で、時間が空いたら1時間以内の仮眠をとってまた疲労回復する。

みんなこれができたら、人類全体で相当効率的でハイパフォーマンスな生産活動を実現でき、驚異的な進化を遂げそうです。

が、やはり、特異体質だから成せる技ですし、朝9時前後に出社して7〜8時間労働する現代の勤務形態では、導入不可能ですね。

昼寝、という感覚ではなく、3〜5時間ほどの短時間睡眠を1日に2回とる、というやり方であれば、フルタイム勤務の人以外であれば実現はできそうです。その場合、起きている間、しっかり活動して、次の睡眠を予定通りの時間にとって、睡眠サイクル・体内時計を一定に保たなないと、体調をくずしてしまいます。もし導入するのであれば、計画的に、慎重に行いましょう。




睡眠負債の解消法は「睡眠の質とサイクルの改善」

答えはシンプルです。

睡眠の質を上げて、日々の睡眠習慣を改善すること。これだけです。

だって、必要な睡眠時間に足りてない時間分蓄積するのが「睡眠負債」ですから、日々の睡眠を充足させるしかないんです。

それで、体内時計を一定にキープして、日々負債を蓄積させないようにする。

そうでないと、先述の実験のように、10日程度確保して、オーバースリープがなくなるまで寝続けるしかないんです。

でもそれは、仕事や家庭生活があれば、なかなかできないことですよね。

寝溜めも、一人暮らしであればできるにはできるのですが、週末は潰れて楽しみややりたいことに費やす時間が圧迫されて、会社に行くか寝るか、の二つしかしない人生になってしまいます

また、家事や子育てを奥さんに丸投げの旦那さんならできるかもしれませんが、なかなかそうはできません。

それに、その奥さんの睡眠負債は、では誰が解消させてくれるのでしょうか?

(日本の女性の平均睡眠時間は男性に比べて1時間以上も短いそうです)

家族総出で、なんとか日々の睡眠時間を確保するより他、ありません。

今一度、睡眠時間の重要性を見直して、家族みんなで睡眠習慣を変えてみませんか?




睡眠の質とサイクルの改善のためにできること

・朝起きる時間は一定にする。

・朝起きたら真っ先にカーテンを開けて日光を浴びる(見る)

・朝起きたら冷たい水で手を洗ったりうがいや歯磨きをする。

・朝ごはんに「トリプトファン」と温かいものを摂る。

・昼寝をしすぎない。20分以内に収める。

・日中は活動的に過ごす。

・夕方18時頃に30分程度の有酸素運動をする。

・寝る3時間前に夕飯をとる。以降は食べない。

・寝るときにいっぱいで苦しくならず、お腹が空きすぎない量で夕飯をとる。

・寝酒はしない。

・寝る1時間半前にお風呂に入る。

・寝る前にストレッチやヨガで体のコリやこわばりをほぐす。

・自分の体にあった枕とマット(敷布団)を使う。

・自分が気持ちいいと思える寝具を使う。

・ジャージなどではなく、寝るために作られたパジャマを着る。

・布団の中では頭寒足熱。

・寝るときは寒すぎず暑すぎない環境を整える。

・アイマスクや耳栓で外界の刺激をシャットアウト。




できること、結構ありますね。

どれも、すぐに変えられそうです。

夕方の有酸素運動も、帰りに一駅余分に歩くとか、少し遠回りして帰るとかすれば、無理なく実現できそうです。駅からの15分ほどの道のりを早歩きして、帰宅したらすぐに15分ほどの筋トレをする、ということでも良さそうですね。少し汗ばむくらいの動きをすればいいので、お風呂掃除などの家事でもいいかもです。

寝具やパジャマを見直すのも、普段頑張っている自分へのご褒美や、健康な未来や日々のパフォーマンスへの投資だと思えば、安いものです。

睡眠負債のもたらすリスクを考えれば、上記に挙げたことはハードルの低いものばかりだと思いませんか?

睡眠負債がかさんで損するのは自分自身、もしくは自分の家族です。

それが、少しの工夫と努力で回避できるのであれば、取り返しがつかなくなる前に、一つからでもいいので、取り組んでみてはいかがでしょうか?

私も早速、起きる時間を一定に保つということと、寝る前のストレッチ・ヨガから始めてみたいと思います。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク