毎年流行するインフルエンザ。2019年でもまたインフルエンザウイルスが猛威をふるっていますが、気になるのは5歳児が「インフルエンザ脳症」で亡くなったとのニュース。
インフルエンザ脳症は死に至る可能性があるし、回復できたとしても、後遺症が残る可能性がある。
インフルエンザ脳症ってそもそも何なのか?発症する原因は何か?何歳でも、大人でも発症するのか?解熱剤が原因って本当か?
後悔しないために、できうる予防策を紹介したいと思います。
目次
インフルエンザ脳症って何?その症状
2019年1月22日のニュースで、同年1月13日に、長野県の小学4年生男児がいわゆる「インフルエンザ脳症」で死亡していたことが明らかになりました。
通常、5歳以下の乳幼児に多いとされてきただけに、小学校高学年に差し掛かる年齢での死亡事例ということが衝撃を与えました。
国立感染症予防研究所のHPによると、インフルエンザ脳症は通称で、「インフルエンザ関連脳症」というのが、より正式な名前のようです。
国立感染症予防研究所いわく、インフルエンザ脳症とは、
「重度の中枢神経症状」を呈する「急性脳症」とのことです。
医師には、急性脳炎として報告義務があるのですが、急性脳炎としての診断条件は、以下の通り。
- 意識障害を伴って死亡、もしくは意識障害を伴って24時間以上入院
- 以下3つのうちの1つを満たす
- 38℃以上の高熱
- 何らかの中枢神経症状
- 先行感染症状
つまり、
インフルエンザに感染して(場合によっては38℃以上の高熱が出て、場合によっては「中枢神経症状」が出て)、意識障害が24時間以上入院するかそのまま死亡した場合
に、いわゆる「インフルエンザ脳症」とされるようです。
インフルエンザ脳症の意識障害とは?
意識障害って、どういうものをいうのでしょうか?
いわゆる「気を失う」という状態、
だけではありません。
- ぼーっとしている
- ウトウトしがち
- 呼びかけへの反応が薄い
- 人や物の名前が出てこない
- どこにいるかわからない
- 日にちがわからない
- 眠り込んだようになる
眠っているのか、意識障害なのかは、判別が難しそうですね。
子供の場合、質問に対してちゃんと答えないことはインフルエンザの時以外も結構ありますし。
インフルエンザ脳症の中枢神経症状とは?
中枢神経症状って、よくわからないですね。
具体的にいうと、以下のような症状です。
- 頭痛
- 嘔吐
- けいれん
- 異常行動(幻覚・幻視、急な笑い・怒り・怯え、など)
- ろれつが回らない
- 理解不能な言葉を話す
ただのインフルエンザでも起こす症状があるので、脳症かどうかの判断は難しいですね。
いずれにせよ、「あれ?なんかおかしいな?」くらいでも、病院で相談してみるべきかと思います。
インフルエンザ脳症の症状はいつ頃から出る?
インフルエンザ脳症は「急性」と言われるだけあって、発熱から1〜2日(より正確にいうと1.4日)でみられることが多いです。
ただし、インフルエンザ脳症といっても様々あるようで、発熱から5〜7日で発症する場合もあるそうで、油断はできません。
インフルエンザ脳症で死亡するのは、発症からどれくらいで?
急性脳炎の診断条件を思い出して欲しいのですが、「意識障害を伴って死亡、もしくは意識障害を伴って24時間以上入院」とあります。
つまり「意識障害」が出始めたら危ない、と思っていいかと思います。
では、発熱からどれくらいで意識障害が出るか、というと、一番多いのが発熱から0日(当日)、次が発熱から1日です。
発熱から4日以内に意識障害が出ることが一般的です。
ただし、発熱前に意識障害が起こる場合もあるそうですので、一概には言えません。
それは、急性脳炎の判断条件が、「38℃以上の高熱」もしくは「先行感染症状」もしくは「中枢神経症状」、ですから、高熱が出る前に意識障害が出ることもありえるということです。
とすると、
通常は、早い場合にはインフルエンザにかかって発熱した当日〜翌日、
もしくは、インフルエンザにかかったとわかるかわからないか、わかった途端に意識障害に陥って、そのまま亡くなる可能性もある、ということですね。
いつ、どのタイミングで病院に行けばいい?
インフルエンザ脳症は、急に進行し深刻な状況に陥るまでも1〜2日と短い場合があり、「すぐに病院に行かなかった」と自分を責めたり、家族を責めたり、家族から責められたりすることがあるかと思います。
「早く」「早めに」って、じゃあいつなの?
って、困ってしまいますよね。
インフルエンザは、検査結果をもって診断されます。
検査は、ある程度発症してからでないと、正確な結果が出ないです。
早く行き過ぎて「陰性」だったけど、帰ったら症状が悪化して、また検査したら「陽性」だったということも、よくあることのようです。
目安としては、
- 感染から24時間
- 発熱から12時間
経ってから、インフルエンザ検査に行くようにしましょう。
また、発熱前に意識障害になる場合もあります。
なので、
- 意識障害が見られたら
- 異常な言動が見られたら
念のために病院に行ってみるといいかと思います。
インフルエンザ脳症の死亡率、後遺症が残る確率
死亡する可能性もあり、怖いインフルエンザ脳症。
死亡せずに済んで、回復したとしても、後遺症が残る可能性があるとのことです。
2000年頃は、
死亡率30%、後遺症出現率25%
その後、対策ガイドラインが普及し、
近年では、
死亡率10%、後遺症出現率25%
とのことです。
死亡率は低くなりましたけど、それでも10人に1人は死亡してしまうって結構高確率ですよね;
そして特筆すべきは、後遺症の出現率は、改善していないということ。
一旦、インフルエンザ脳症になってしまったら、4人に1人は後遺症が残るということになります。
後遺症の症状とはどんなものか?
後遺症ってどういうものなんでしょうか?
一般的に言われているのは以下の通りです。
- てんかん発作の頻発
- 嚥下障害(飲み込みに問題がある)
- 知能低下
- 運動麻痺
え、けっこう重いじゃん・・・怖・・・・・
と思いました。。。
もちろん、軽度の場合もあるようですが、麻痺がひどいと一生寝たきりです。
大人になっても、生涯、この後遺症で苦しむ人が少なくないようです。
本人も、支える周りの人間も、苦労します。
なぜこんなに重いのか?
インフルエンザ脳症で脳の中で何が起こっているかというと、「脳のむくみ(浮腫)」です。
炎症を起こしているんですね。
ただでさえ、高熱を起こせば、脳に障害が残るリスクが多少なりともあるんです。
さらに、脳がむくむと、頭蓋骨を圧迫し、行き場のない脳は押しつぶされます。
押しつぶされた脳の中で正常に機能しなくなる部分が出てくるのは、冷静に考えると容易に想像できます。
インフルエンザ脳症は大人でもなる?乳幼児のみ?発症年齢は?
先述しましたが、インフルエンザ脳症は、5歳以下の乳幼児に多いとされています。
実際に、報告が上がるのは、乳幼児が最多のようなんですが、
実際には、広くみて、9歳までの年齢で発症率が多いと言えるようです。
今回2019年1月13日に亡くなった長野県北部の男児については小学4年生で、ちょうど発症率が高いとされる年齢の範囲、「9歳まで」に含まれます。
ただ、大人でも発症する、だけでなく、死亡例もあるんです。
2015年に、看護師をしていた当時41歳の女性が、勤務中にインフルエンザ患者と接触し、帰宅後に38.5℃の高熱を確認。
薬を服用するも、熱は治らず、意識朦朧となり近所の病院を受診。
診察中に意識を失い、大きな病院に搬送され入院。
一時的に36.7℃まで体温が下がるも、また上昇し40℃に達した。
(一度下がってまた上がるのは、インフルエンザの特徴)
意識障害が治らず、治療の甲斐なく死亡。
とのことです。
これをみると、熱が下がったからといって、安心はできないようですね。
問題は脳にあるので、「意識障害」が治らない限り、脳の炎症は止まっていないということで、予断を許さない状況ということかと思います。
インフルエンザ脳症はインフルエンザの予防接種で防げるか?その効果は
インフルエンザの予防接種を受けていれば、インフルエンザ脳症を発症しないのでしょうか?
結論としては、予防接種とインフルエンザ脳症についての因果関係は認められていません。
つまり、予防接種したからといって、インフルエンザ脳症にかからないという保証はないです。
ただし、そもそもインフルエンザに感染しなければ、インフルエンザ脳症にはなりませんから、予防接種を受けておくことは有効と考えられます。
インフルエンザA型B型C型のタイプにより発症率は変わる?
インフルエンザには、A型、B型、C型というタイプがあります。
職場などでインフルエンザにかかった人が出ると、「何型?」と話題になることが多いかと思います。
インフルエンザの型によって、脳症の発症率は変わるのでしょうか?
結論から言うと、どのインフルエンザ型であっても、脳症に繋がる可能性があります。
実は、どのインフルエンザでも脳症を発症する、と言いましたが、A型が脳症を発症しやすいという説もあります。
それは、「高熱」をもたらすかどうか、が鍵になっている気がします。
それについては、” インフルエンザ脳症の原因 ”のところで詳しく説明します。
インフルエンザ脳症の原因はなんと解熱剤?
インフルエンザ脳症ですが、もちろん、インフルエンザにかかれば必ずかかると言うわけではありません。
明確な原因というのは、はっきりわかってはいません。
関連性が高いと言われているのが、特定の成分が含まれた、解熱剤です。
解熱剤全てではなく、特定の成分が含まれたもの、と言うのがポイントです。
インフルエンザ脳症の原因の一つとされる解熱剤
それは、アスピリンです。
海外の頭痛薬として有名かもしれません。
実は、有名な解熱鎮痛剤「バファリン」にも含まれているようです。
海外で、インフルエンザにかかった子供がアスピリンを服用すると、急性脳症を引き起こすとされる「ライ症候群」を誘発するとわかり、使用されないようになりました。
インフルエンザ脳症を悪化させると言われる解熱剤
原因となるとは言えないですが、悪化させる、増長させる成分もあるようです。
それは、
ジクロフェナクナトリウム
聞いたこと、ありませんよね。
日本では「ボルタレン」という名前で知られています。
もう一つが、
メフェナム酸
です。こちらは、市販薬ではありません。
「ポンタール」という名前の処方薬です。
ちなみにポンタールは、販売中止になっているようなので、新しく処方されることはないかと思います。
非ステロイド性抗炎症薬のうち、NSAIDsの一種で、解熱・鎮痛剤として用いられます。
筋肉や関節に塗る薬としての認識が一般的かもしれません。
ボルタレンが処方されるのは、以下の症状に対してです。
関節炎、変形性関節症、偏頭痛、痛風、腎結石、尿路結石、小〜中規模の手術後、外傷、歯痛、腰痛、筋肉痛、生理痛
インフルエンザの小児に対して用いることは禁忌とされており、
現在、インフルエンザの際の解熱剤として処方されることはないそうです。
じゃあ安心か?
というと、そうでもないかもしれません。
病院で処方された薬が残ったからと、次のために取っておく、っていうこと、結構ありますよね。
「解熱剤」だからといって、上記の他の症状で処方されたボルタレンやポンタールの残りを、インフルエンザにかかった際に服用してしまうと、インフルエンザ脳症を悪化させる危険性があるんです!
同じ症状に対する薬でも、複数の種類が用意されているのは、こういったリスクを回避する意味があるんですね。
ロキソニンなら大丈夫?インフルエンザ脳症予防で飲んじゃダメな解熱剤
ボルタレンやバファリンがダメなら、ロキソニンやエスタックイブ、ノーシンなら大丈夫なんでしょうか?
答えは、
ダメ! 大丈夫じゃありません!
インフルエンザ脳症との関連が強いと言われているのが、NSAIDsという種類の非ステロイド性抗炎症薬だからです。
以下の薬が該当します。(市販薬名で五十音順)
- アスピリン(アセチルサリチル酸)
- イブA錠(イブプロフェン)
- エスタックイブ(イブプロフェン)
- サリドンWI(イソプロピルアンチピリン)
- セデスハイ(イソプロピルアンチピリン)
- ナイキサン錠(ナプロキセン)
- ナロンエース(エテンザミド)
- ノーシン(エテンザミド)
- ノーシンピュア(イブプロフェン)
- バファリン(イブプロフェン、アセチルサリチル酸)
- フェリア(イブプロフェン)
- ブルフェン(イブプロフェン)
- ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)
- ポンタール(メフェナム酸)
- リングルアイビー(イブプロフェン)
- ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)
「知らずに飲んでしまって後悔した、大変だった」という人も結構いるようです。
注意しなければいけないのは、
錠剤、粉末剤などの内服薬だけでなく、座薬やシップなどの外用薬としても処方されるとのこと。
体内に成分が取り込まれれば、内服した場合と同じリスクがあると考えられます。
例えば、上には挙げませんでしたが、湿布や塗り薬として知られる「インドメタシン」も、NSAIDsに含まれます。
インフルエンザの時に飲んでいい解熱剤
「アセトアミノフェン」という成分であれば、問題ありません。
商品名でいうと、「タイレノールA」です。
インフルエンザ脳症で後悔しない為の予防策
さて、もうお分かりかと思いますが、
インフルエンザ脳症にならないための予防策です。
「インフルエンザ脳症」予防法
高熱になるから、解熱剤を飲む。
解熱剤が、NSAIDsであれば、脳症になる可能性がある。
ということで、インフルエンザの疑いがある場合には、「タイレノールA」を飲みましょう。
NSAIDsにあたる解熱剤は飲まない!
家に残ってた、常備していた解熱剤を安易に飲まない!
使い回しはダメです!
もったいないですが、飲み残した薬は、潔く捨てましょう。
家族で同期間にインフルエンザになる可能性がありますから、もし、使い残しを他の人に使いたい場合は、お医者さんに相談してからにしましょう!
早めに診察を受け、症状を細かく報告・相談する
「意味がないこと」、「重要性・関係性は低いこと」と勝手に判断せず、普段と違うと思うことは、事細かに医師に報告しましょう。
そこで注意ですが、
医師によっては、安易にただのインフルエンザと決めつけて、人の話を最後まで聞こうとしない人もいます。
負けずに、「気になるから」と食い下がって、話を聞いてもらいましょう。
医者は万能でも神でもありません。
医者任せにせず、自分の身は、家族の身は自分が守る、という気持ちで、後悔のないように出来ることをしましょう。