牛乳って、日本人の食生活にあって当たり前くらいに浸透していますが、牛乳や乳製品を摂るとお腹が痛くなったり痒くなったりして、体が受け付けないという人も少なからずいますよね。原因として挙げられる「乳アレルギー」と「乳糖不耐症」について取り上げてみました。
乳アレルギーとは
乳アレルギーとは食物アレルギーの一つです。
乳アレルギーの症状
皮膚症状
かゆみ、蕁麻疹、湿疹、赤み、腫れ(むくみ)
粘膜症状
口腔内:腫れ・違和感・イガイガ感・かゆみ
目:かゆみ・充血・涙、まぶたの腫れ・むくみ
鼻:くしゃみ・鼻水・鼻づまり
呼吸器症状
喉が締め付けられる感じ、むくむ感じ、声枯れ、咳、喘鳴、息苦しさ
消化器症状
違和感、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、血便
全身症状
だるさ、頻脈、意識朦朧、血圧低下
私の場合ですが、程度が軽い場合は、太ももや胴体、腕や顔に何も出てはいないけど、やたらと痒くなります。
あと大抵は、胃もたれみたいな気持ち悪さが生じ、喉が苦しくなり、食べ物が通ったところ全部がどうにも言えない違和感で数時間苦しみます。
乳アレルギーのアレルゲン
アレルゲンとなるのは、乳に含まれるタンパク質です。(どのアレルギーでも、アレルゲンはタンパク質ですが)
牛乳に含まれるタンパク質
- カゼイン:80%(熱による変性が起きにくい)
- ホエイ:20%(80℃で熱変性が起こる)
牛乳に含まれるタンパク質は、大きく分けて、「カゼイン」と「ホエイ(ホエー)」に分けられます。このどちらもアレルゲンとなります。
カゼインも細分すると何種類かあって、α(アルファ)-カゼインの中の、αS1-カゼインっていうものが、アレルギーを誘発するアレルゲンとして働くそうです。
また、ホエイに含まれるβ-ラクトグロブミン、α-ラクトアルブミンの二つもアレルゲンになります。このうちβ-ラクトグロブミンは牛乳に含まれるタンパク質の10%を占めます。
牛乳の、ヨーグルトで言うところの白い部分も透明の部分も、アレルゲンになるということです。
人間の母乳にはアレルゲンはないのか?
母乳に含まれるタンパク質の構成は、
- カゼイン:40%
- ホエー:60%
同じ「乳」と言っても人間の母乳にアレルゲンは含まれていないそうです。乳児期からアレルギーを発症してしまっては、生存できませんからね。
アレルギーを起こすのは、基本的に、本来人間の体の中には無いものが取り込まれた時、産生された時です。
ただしここで注意が必要なのは、母乳をあげる母親が、牛乳を飲んでいる場合です。
牛乳を飲むと母乳に牛乳由来のアレルゲンが含まれてしまうんですね。
その時点で乳児が乳アレルギーだった場合、アレルギー反応が出てしまいます。
母乳をあげ始める4ヶ月前から、牛乳は控えたほうがいいようです。
乳製品を食べると乳腺炎になりやすいのは、母乳中に牛乳由来の脂肪やたんぱく質が増えてドロドロになるからです。
一般の日本人が牛乳や乳製品を摂り始めるようになったのは、明治時代からですが、それから150年ほどでは、体が牛乳に対応して進化するまでにはいかないのですね。
乳糖不耐症(牛乳不耐症)とは
乳糖不耐症とは、牛乳に含まれる「乳糖(ラクトース)」という炭水化物(糖質)を分解する酵素(ラクターゼ)を持っていない(もしくは少ない)ため、消化できずに腸管に残った乳糖によってお腹がゴロゴロしてしまう体質(病気)のことです。
世界での乳糖不耐症事情
アジア人の90%、黒人とアメリカ先住民の70%、ヒスパニック系の50%が該当し、北欧系・北米だと15-30%しか該当しないそうです。
今や、人種は混じり合っていて、必ずしもこの統計に沿うわけでは無いと思いますので、目安程度に考えていただきたいですが、世界的に見てもかなりの割合、かなりの人数が、乳糖不耐症のようです。
そうはいっても、完全にラクターゼが無いという場合は稀だそうで、
ほとんどが乳児期には持っていたラクターゼが、離乳によって活性を失い乳糖を分解できなくなるということのようです。
大人になっても乳を飲むのは生物的には想定外
とすると、乳児期を過ぎて乳を飲むというのは、生物的には異常なことのようですね。
栄養価が高いし、酪農を生業とし、動物の乳を貴重な食材として利用したのは人間の知恵だと思いますが、
それと体が受け付けるかどうかは別ってことですね。
牛乳の消費量と乳糖不耐症罹患人口は反比例するそうで、牛乳を常飲する人種はそれに適した体になっていると考えられるかと思います。
乳糖不耐症に治療は必要か?大人と赤ちゃんでは違う?
乳糖不耐症で、治療が必要になるのは主に、赤ちゃん(乳児)の場合のみだそうです。
なぜなら、離乳が済めば、ミルク以外から栄養が摂取できるからです。牛乳や乳製品を避けていれば、症状は治まります。
赤ちゃんは、母乳かミルクを飲む以外の栄養補給法といったら点滴しかないですが、毎日点滴をし続けるわけにはいきません。乳児にとってはかなりの負担です。
治療方法は、乳糖を除いたミルク(ノンラクトミルク/ラクトレスミルク)を飲ませるか、乳糖を分解する薬(β-ガラクトシダーゼ製剤)を用いるそうです。
無乳糖ミルクには、牛乳由来で乳糖を除去したものと、豆乳由来のものがあるようです。豆乳由来の場合、乳糖不耐症には良くても、大豆アレルギーのアレルギー症状が出る場合があるため、安心せず、飲ませた後の赤ちゃんの体調や反応によく注意するようにしてあげてください。
↓乳糖なし、乳タンパクなし、大豆タンパクなしミルク↓
(=乳糖不耐症でも、乳アレルギーでも、大豆アレルギーでも飲ませていい)
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(=乳糖不耐症は飲ませていい。乳アレルギーと大豆アレルギーは飲ませちゃダメ)
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でも乳糖不耐症は多くの場合は克服できる
離乳によって一度は活性を失っても、少しずつ慣らすことで、活性は復活するそうです。
なので、子供の頃に牛乳を飲んでお腹がゴロゴロしていた人でも、牛乳を飲み続けることで、大人になるまでには平気になっている可能性が高い。
ただし、稀にいるラクターゼ(乳糖分解酵素)が無い人は、飲めば飲むほどお腹を下すだけです。検査をするほどでもないとは思いますが、症状がひどい場合は早めに諦め、生活に支障がある、と言うのであれば病院で検査してもらいましょう。
乳糖を除去した牛乳もあるようですので、無理して飲む必要はありません。
牛乳を加工したものでもダメなの?
乳アレルギーは食べないほうがいい乳加工品
- 脱脂粉乳・練乳
- 低脂肪乳・無脂肪乳
- 調整牛乳
- 無調整牛乳
- チーズ
- ヨーグルト
- 生クリーム
- バター
- ギー
目安ですが、食べないほうがいい順番に書いています。
脱脂粉乳や練乳(煉乳)がリスクが高いのは、牛乳を濃縮しているからです。脱脂粉乳自体は、濃縮という加工はしていませんが、脂肪分を取り除いている分、タンパク質の割合が高いです。普通の牛乳よりも低脂肪乳・無脂肪乳がリスクが高いのは、脂肪を減らしてある代わりに「脱脂粉乳」を加えているからです。
調整牛乳がリスク高めなのは、水分を除いてタンパク質を濃縮しているからです。
チーズは牛乳のタンパク質と脂肪分を発酵させて作っていますが、アレルゲンは残存しています。というより、水分が抜けている分、タンパク質の割合が高めで、アレルギーリスクは高いです。
ヨーグルトは発酵により多少タンパク質が変性しているので、アレルギーリスクは多少小さくなります。
生クリームは主に脂肪分からできていますが、タンパク質も少量含まれるので、アレルゲンは存在します。
バターは生クリームから作られますので、ほとんど脂肪分からできています。でもアレルゲンは多少存在します。
ギーはバターを漉したり上澄み液だけ取り出したりして、バターよりもさらに脂肪だけに精製したものですので、アレルギーリスクは小さいです。ただし完全に取り除かれるわけではないので、人によっては十分アレルギー反応が出ます。
ここには書いていませんが、アイスクリームや、乳飲料など、脱脂粉乳、全粉乳などの乳由来の原材料が使われている食品は、当然ながら食べないほうがいいですよ。
乳糖不耐症は食べないほうがいい乳加工品
- 牛乳全般・練乳・生クリーム・脱脂粉乳・フレッシュチーズ
- ヨーグルト
- 熟成チーズ
一番目に挙げたものは、牛乳と同じ程度の乳糖が含まれているそうです。ヨーグルトは、中に含まれる酵素の働きにより、乳糖が分解されるので、あまり問題にならないようです。
チーズは、熟成の過程で乳糖が分解されていき、36ヶ月経つと、ほとんどゼロに近いくらいに分解されるようです。可能であれば熟成期間を確かめてみましょう。
乳アレルギーの場合と同じように、アイスクリームなどや乳飲料も、乳糖が含まれます。
不安があれば、乳糖フリーの乳製品を買うようにしましょう。
乳糖不耐症や乳アレルギーは、牛乳を温めることで飲めるようになるか?
「温める」と言うのも、「加工」と言えなくもありません。
では、温めたら牛乳を飲めるようになるかと言うと、
乳糖不耐症の場合は、飲めるようにはなりません。
乳アレルギーの場合は、多少飲みやすくなる場合もあります。
と言うのは、乳糖不耐症の場合は、「乳糖」が問題で、「乳糖」は「糖」なので加熱しても変性(性質が変わること)がないんです。
一方、乳アレルギーの場合は「アレルゲン」となる「タンパク質」が問題で、「タンパク質」は熱によって変性(熱変性)するので、加熱したときに多少アレルゲンとして作用しなくなるので、やや飲みやすくなると言えます。
ただし、アレルゲンとして大部分を占める「カゼイン」は熱変性しないので、本当に「多少」と言うくらいだと思いますので、過信しないようにしてください!
牛乳の代用品、ヤギ乳(ゴートミルク)ってどうなの?
乳アレルギーとヤギ乳
乳アレルギーの「乳」というのは、主には「牛乳」です。
ヤギの乳や、羊の乳といった牛以外の動物の乳でも、成分の構造的に似ていれば、アレルゲンとして働く可能性はあるそうですが、牛乳に比べるとその可能性が低いんだそうです。
その理由は、カゼインの中でもアレルゲンとして働くαS1-カゼインが、牛乳以外にはあまり含まれないから。
なので人によっては、牛乳は完璧ダメだけど、ヤギ乳なら大丈夫だった、なんてこともあるようです。
どうしても動物性の「乳」が飲みたい、食べたいって人は、ヤギ乳を入手することも、方法としては存在します。
ただし大丈夫かどうかは、その人のアレルギーレベルによりますので一概には言えません。
乳糖とヤギ乳
ヤギ乳には、乳糖も含まれます。ただし、牛乳とは性質が異なりますので、乳糖不耐症でもヤギ乳なら割と平気、って人が結構いるみたいです。
ちなみに、犬も、牛乳でお腹を壊します。これもアレルギーではなく、乳糖不耐症のような仕組みです。
自分とは違う生き物の乳は、本来であれば飲むものではないので、体に合う合わないがあります。それは犬であっても同じなんですね。
そんな犬でも、牛乳はダメでも、ヤギ乳なら大丈夫ってことが多いようで、犬用のヤギミルクが液体だったり粉末だったりで売っていますよ。
ヤギ乳の特徴
タンパク質にアレルゲンがわずかしか含まれない
前述した通り、タンパク質の中のα-カゼインが、タンパク質全体のわずか3%しか占めないので、牛乳に比べて断然アレルゲンの量(割合)が少ないそうです。
なので、乳アレルギーであっても飲んでも大丈夫な人が多いんですね。
もちろん人によりますし、たくさん飲めばアレルゲン量が絶対的に多くなるので、アレルギー症状が出る可能性も高まります。
安心し過ぎず、アレルギーレベルが高い場合は医師と相談しながら少しずつ試してみてくださいね。
乳糖が牛乳より少なく、粒も小さい
乳糖は、ヤギ乳にも含まれていますが、牛乳の場合の90%の量しか含まれないそうです。
いや、「しか」って言いつつ、90%じゃあ結構多いですよね。
でも、乳糖不耐症の人でも、ヤギ乳の場合はお腹がゴロゴロしにくいそうなんです。
その理由はまず、乳糖が脂肪球に包まれていて、むき出しにならないからです。
乳糖は、脂肪球に包まれて存在することが多く、脂肪に包まれていると直で乳糖にさらされないので、乳頭の影響を受けにくいそうです。
次に、乳糖の小ささがあります。
- 牛乳:大きさがバラバラな上に、大きいものはかなりの大きさ
- ヤギ乳:大きさが均一で小さめ
乳糖不耐症は、乳糖を消化(分解)するための消化酵素(ラクターゼ)が少ないもしくは無いってことなので、消化しにくい(できない)からお腹がゴロゴロするんですね。
乳糖が小さいと消化がしやすいので、ゴロゴロしにくいってことです。
脂肪の粒が小さく、質的にも消化しやすい
脂肪の粒のことを「脂肪球」なんて言ったりしますが、ヤギ乳は脂肪球の大きさが牛乳よりも小さく、均一だそうです。
乳糖の時も言いましたが、粒が小さければ消化しやすいですよね。
また、脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸が多いそうなんですが、中鎖脂肪酸は、吸収されやすいと言われています。吸収しやすい=消化しやすいって言うことですね。
実際、ヤギ乳の消化にかかる時間は、牛乳の4分の1だそうです。
ヤギ乳まとめ
と、以上で見てきた通り、ヤギのミルクは牛乳に比べて、乳アレルギーも起こしにくいし、乳糖不耐症でも飲みやすいようです。
人間用ヤギミルクでも、100mlが¥210-270くらいで売っているようです。ちょっと高いですけど、ミルク飲みたいんだ!って時もありますよね。
ネットからでも買えますよ。
チーズであれば、「シェーブルチーズ」として売っているものはヤギの乳で作られたチーズということになります。
独特の風味だそうなので、慣れるまでは食べづらいかもしれません。
旬は4〜5月の春時期だそうです。
ぜひチェックしてみてください。
乳アレルギーと乳糖不耐症のまとめ
乳アレルギー
原因物質
- αS1-カゼイン
- β-ラクトグロブミン(ホエイ)
- α-ラクトアルブミン(ホエイ)
年齢層別のなりやすさ
乳幼児>大人
乳糖不耐症
原因物質
乳糖(ラクトース)
原因要素
乳糖分解酵素(ラクターゼ)の不活性・不分泌
年齢別のなりやすさ
乳児<幼児>大人
ヤギミルクは代用品(代替食品)になるか
乳アレルギーの場合:有効
乳糖不耐症:有効
ただし、人による。
という感じです。
個人的には乳アレルギーなので、調べて見て新しい発見もあってよかったです。
特に、アレルギーの原因物質は「カゼイン」くらいしか知らなかったのですが、「α-ラクトグロブミン」とかいうのと「β-ラクトアルブミン」とかいうのもアレルゲンなんですね。
正直、その名前を聞いても何のことやらわかりませんが。
あと、カゼインは加熱してもアレルゲンとしての活性を失わないけど、
ホエイ側は加熱すると変性してアレルゲンとしての活性を失う可能性があるということも、一つ発見です。
乳製品でもモノによっては、加熱することでアレルギーの反応が起きにくくなるということですよね。
固形タンパク質部分(白いところ)と、液体部分と、どちらがどれくらいの割合で含まれるかがキーポイントですね。
この記事が、皆さんが食事に気をつけたり、逆に食事を楽しめたりするための助けになれば嬉しいです!