食レポで「うま味がすごい!」とか言ってたり、「日本料理はうま味が効いてる」とか、味の素とかいう「うま味調味料」が売られてたりしますが、「うま味」って何でしょう?うま味を感じさせる成分って何なのか、うま味を含む食材には何があるのか、「うま味の相乗効果」とは何か…という、日本の食において欠かせないと言える「うま味」について掘り下げてみました。
目次
そもそもうま味とは何か?(旨味の意味)
うま味と旨味と旨みとウマミ
音としては「うまみ(umami)」ですが、文字に表すと、「うまみ」「うま味」「旨味」「旨み」「ウマミ」と様々な表現をされますよね。それぞれ、どう違うんでしょう?
普段はふつうに使い分けているように思いますが、違いを言葉で説明しろと言われると難しいですよね。
辞書で調べた「うまみ」の意味辞書で「うまみ」を調べてみると、3種類の意味に分けられるようです。
- 食に関するうまみ
- 技芸に関するうまみ
- 仕事・商売でのうまみ
技芸というのは、「サッカーが『うまい』」「料理(の腕)が『うまい』」とかいう使い方。仕事・商売というのは、「これはあまり『うまみ』の無い商売だな。」とかいう使い方をします。
さて、肝心の食に関する「うまみ」ですが、これはさらに2つの意味に分けられるようです。
- うまさの度合い、美味しさ
- 食材から出るだしの味
「うまさの度合い、美味しさ」の方の「うまみ」
は、「旨味」「旨み」「美味み」というように、「旨」とか「美味」という字が使われます。これは、広い意味での感覚的な「美味しさ」を意味し、味以外にも匂い、食感、体調、雰囲気、食べる人間の好みなど複数の要因に影響される不確かなものだそうです。
「だしの味」としての「うまみ」
は、他の要素に影響されない確固たる独立した味の種類の一つを意味します。これについては次の項で詳しく説明しますね。
とすると、食レポでの「これは…うまみがすごいですね!」は、「すごく美味しいですね」とも「うまみがすごく出てますね」ともとれてしまいますね。
「うまみがよく効いてますね」だと、食材から出るだしの味、だとわかりやすいですね。
基本味としてのうま味
「食材から出るだしの味」としての「うまみ」について詳しく考えていきます。
これは、さらに詳しく言うと、「基本味(きほんあじ、きほんみ)」としての「うま味」ということになります。
「基本味」って何?と思われる人も多いかと思います。味は、現在では5つに分けられるとされていて、その5つの味が「基本味」と言います。
「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つですね。
昔から世界的に、味は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の4種類とされていたのですが、その4つのどれとも言えない第5の味が1908年(明治41年)に日本人化学者池田菊苗(いけだきくなへ)により発見され定義されました。それが「うま味」です。
美味しさとしての「うまみ」と区別すると、「なんとも言えない『旨味』」の根拠とされるものが「うま味」であり、「うま味成分」なんですね。
ちなみに、赤ちゃんが最初に味わうのは、「甘味」と「うま味」だと言われています。母乳には「甘味」を感じさせる糖分と「うま味」を感じさせるうま味成分が含まれているのだそう。離乳食も、素材の味やだしの味からスタートさせて、味覚を育てていくのだそうです。
うま味は、スタートの味覚なんですね。
うま味の特徴
その独立した味としての「うま味」ですが、「なんとも言えない深い味」ではちょっと定義があやふやだな、と思われる方もいらっしゃるかと思います。
料理をしているシェフたちが「うま味」の特徴を理解して解析して分類したそうなので、それを紹介したいと思います。
舌全体に広がる:
他の味よりもより広く舌全体に広がり、舌全体が包み込まれるような味である
持続性がある:
口の中から食べ物がなくなったあとも、数分間に渡り残るような持続性のある味である
唾液の分泌を促す:
より粘性がある唾液を長く分泌させる味である
例えばですが、蕎麦やうどんを食べたあと、しばらくず〜っと口の中に味が残っていて、余韻で味わえた、という経験はありませんか?
うどんや蕎麦の汁も、鰹や昆布などのだしが使われていますよね。
あと、だし無しでお味噌汁やスープを作った時、なんか物足りなくて味わいが足りない、と思ったことはありませんか?
ただしょっぱいだけだったり、ただ調味料単体の味がするだけだと、なんか美味しくないんですよね。
うま味があることで、食事の味をより味わい深くすることができ、長く楽しめて、より満足を得られるんですね
人にもよると思いますが、食事って、ただの栄養補給ではなく、食べて料理を楽しめないと心が満足しないと思うんです。
だからまた何か食べたくなってしまったりして、肥満にも繋がる気がします。うま味は料理にとって不可欠のものかもしれません。
うま味を感じさせる成分の種類と一覧
さて、「うま味」を発見したのは池田菊苗という話をしましたが、池田が発見したのは、ただ一つのうま味成分だけでした。それが「グルタミン酸」です。
補足:正確にいうと、池田は「グルタミン酸ナトリウム」をうま味成分としました。難しい話になりますが、うま味として感じるには、ナトリウムなどのミネラルと結びつかないといけないそうですので、正確にいうとうま味として感じるのは「グルタミン酸ナトリウム」ですが、ここではわかりやすく簡易的に、ミネラル分を除いた「グルタミン酸」という表記とさせていただきます。
さて、うま味成分は「グルタミン酸」以外にもいくつかあり、大きく3つの系統に分けられるそうです。以下で詳しくみていきたいと思います。
うま味の3大系統
うま味成分は、その性質により、大きく3つに分けられます。
うま味成分タイプ1:アミノ酸系
まず一つ目が、「アミノ酸系」です。アミノ酸はタンパク質をや脂肪を構成する単位です。
アミノ酸系に分類されるうちで「うま味」を呈する代表的なものが「グルタミン酸」で、ほかには「アスパラギン酸」が挙げられます。
が、アミノ酸であればすべて「うま味」を呈するわけではありません。
スポーツドリンクや栄養ドリンクに入っている成分で有名なものである「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」「アルギニン」は、「うま味」ではなく、「苦味」を呈します。
スポーツドリンクやイオン飲料などという飲み物の中で、飲んでやや苦味を感じるものがありますが、これらのアミノ酸たちが入っているからかもしれません。
ちなみに、タンパク質自体は無味だそうで、お肉も豆腐も、噛んで小さくして消化酵素などでアミノ酸にまで分解して初めて味を感じるそうです。スポーツドリンクの場合は、すでにアミノ酸の状態で口に入れるので、すぐに苦味を感じるのですね。
うま味成分タイプ2:核酸系
次の「核酸系」ですが、核酸とは遺伝子が組み込まれているDNAとRNAの総称で、細胞が存在する上で、また、新しく生まれる時には必ず必要になるものです。すべての生物の細胞の中に存在します。
核酸は別名「ヌクレオチド」とも呼ばれる、リン酸を含んだ物質です。有名なのが「アデノシン三リン酸(ATP)」で、これは生物の代謝や運動エネルギーの源です。
と言ってもちょっと難しいですね。
核酸にもいろいろあります。核酸の中で「うま味」を呈する代表的なものは「イノシン酸」「グアニル酸」です。
うま味成分としての「イノシン酸」が発見されたのは1913年、「グアニル酸」が発見されたのは1960年です。
ほかには「キサンチル酸」なんてものもあるそうです。「キサンチル酸」は「うま味」成分でもあり、「プリン体」でもあるそうです。これはあまり摂りたくないですね。
うま味成分タイプ3:有機酸系
最後が、「有機酸系」です。有機酸とは、窒素を含まない炭素化合物のことで、酢酸、クエン酸、乳酸が有名ですが、その中で「うま味」を呈するのは「コハク酸」と言われています。
コハク酸は体内(腸内)でも産生されているそうですが、工場生産されたものは、調味料や酸味料、pH調整剤の役割で食品添加物として、そして入浴剤、メッキ薬、写真薬としてなど広い分野で使われているそうです。
1つの食品に含まれるうま味成分は1系統とは限らない
うま味成分は、この3系統に分けられて、それぞれのうま味成分が含まれる食材というのはインターネットやら本やらで紹介されていますが、一つの食材に一つのうま味成分だけ、一系統のうま味だけ、が含まれるわけではありません。
例えば、「海苔」はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の3つを含みます。グルタミン酸をたくさん含むと言われている昆布はもう一つのうま味成分「アルギニン酸」も含んでいます。
うま味の3大成分と食品一覧
グルタミン酸:
昆布、チーズ、緑茶(一番茶)、イカ、ホタテ、海苔、トマト、母乳
イノシン酸:
煮干し、鰹節、しらす干し、ほか魚類、肉、海苔
グアニル酸:
干し椎茸、ほかキノコ類、海苔、ドライトマト
海苔は、唯一、3つのうま味成分すべて含んでいることが証明された食品だそうです。おにぎりが非常にシンプルな構成なのに日本人に愛される原因の一つが、この海苔のうま味のせいかもしれません。
『うま味の相乗効果』とは?
皆さんは「うま味の相乗効果」というものをご存知でしょうか?
言葉としては聞いたことがないし使ったこともないかもしれませんが、感覚や経験則として知っていて普段の料理に役立ててる方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
意味としては、二種類のうま味成分を合わせた時に、足し算したよりも多く、掛け算したようにうま味が倍増して感じられることを言います。これは、科学的にも証明されているそうです。
昆布だしだけ、かつおダシだけ、干し椎茸だしだけで使うよりも、だしは二種類を組み合わせた方が、味がより深まり広がりをみせるんですね。
『相乗効果』を起こすうま味成分の組み合わせ
相乗効果を起こすと言われているうま味成分の組み合わせを紹介します。
グルタミン酸 × イノシン酸
グルタミン酸 × グアニル酸
昆布だし×かつおダシ(グルタミン酸×イノシン酸)の場合、一対一の量で組み合わせると、一番効果を発揮するそうで、単純に足し算した場合の7〜8倍のうま味を感じられるそうです。
一対一とか、どれぐらいの量かよくわからないんで、とりあえず「一番だし」の作り方として紹介されている作り方で作れば大丈夫です。
ちゃんとやりたい、って方は、関西の料亭の味を調べてみるといいと思います。
『うま味の相乗効果』を利用した料理の例
グルタミン酸 × イノシン酸の例:
昆布だし×かつおダシ、昆布だし×煮干しだし、チーズ×肉、トマト×魚、ホタテ×のり、昆布だし×トマト×かつおダシ、チーズ×のり
料理例:
一番だし、合わせだし、チーズのせハンバーグ、ミートソーススパゲティの粉チーズがけ、ホタテのお寿司、軍艦巻き、トマトおでん、トマト鍋、チーズ磯辺餅
グルタミン酸 × グアニル酸の例:
昆布だし×干し椎茸だし、昆布だし×ホタテだし×干し椎茸だし、昆布×のり、チーズ×ドライポルチーニ茸、チーズ×ドライトマト
料理例:
おでん、筑前煮、ラーメン(支那そば)、昆布と海苔の佃煮、とろろ昆布入りおにぎり、とろろ昆布と刻み海苔乗せ山かけ蕎麦、ピザ
人工うま味、「うま味調味料」の作り方
イノシン酸とグアニル酸の作り方
タピオカでんぷんを原料として、発酵によって「イノシン」と「グアノシン」を生成し、それをリン酸を加えて「イノシン酸」と「グアニル酸」に変化させて作ります。
グルタミン酸の作り方
グルタミン酸生産菌による発酵法で製造されます。
廃蜜と言われるサトウキビから砂糖になる蜜を搾り取った残りカスを原料に、菌に発酵を行わせ、グルタミン酸を得る方法です。
ここまで聞いただけだと、「廃」蜜ってのは気になるけど、割と自然な感じで作ったものなんじゃん!って安心しちゃうと思うんですが・・・
作る過程で、発酵を促すための添加物や、窒素源としての硫酸アンモニウムや抗生物質やある種の界面活性剤などや、発泡を調整する薬剤が添加されるそうです。
また、そのままでは「グルタミン酸」でしかないので、「水酸化ナトリウム」を加えてナトリウムをプラスして、「グルタミン酸ナトリウム」に変化させます。
・・・こう聞くと、身体に取り入れて本当に大丈夫かな?という気がしてきますね。。。
うま味は料理をより美味しくする隠し味
料理を作っていて感じるのは、うま味は、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」という単純な単一な味に、深みと広がりを加えてくれるという事です。
カレーなどは、トマトやチョコ、ソースにケチャップ、生姜にニンニクなど、混ぜれば混ぜるほど美味しくなる印象があり、私なんかは野菜炒めや残った煮物、その残り汁なんかまで入れてしまうことがあります。お鍋の中では、野菜や、きのこ類、肉、魚、昆布や鰹から出るだしがたくさん混ざり合って、うま味の相乗効果が起こりまくって、美味しさが倍増しているんでしょうね。
一方で、だしを効かせた料理というと、湯豆腐やかけうどん、すまし汁、だし巻き卵なんかがありますが、これは、多くても主に二つのだしで構成されていると思いますが、十分な美味しさがありますよね。だしは、素材のうまさも引き立てると言えるかもしれません。
「だし」というと「昆布」「鰹」「いりこ」「あご」「干し椎茸」など「だしが取れる食材」というものは固定されたイメージ、認識があると思いますが、実は、野菜や椎茸以外のきのこ類などからも出ているんですよね。
チーズやドライトマトなどからも「だし」とは言わないけど「うま味」がにじみ出て口の中に広がって、素材と素材がマリアージュを生み出して料理を美味しくしてくれています。
それは、日本だけではなく、イタリアやフランス、マレーシア、タイ、香港など、ご飯が美味しいとされている国の料理は、素材のうま味をうまく組み合わせて作られていると思いますしそれがその国の人だけでなく他の国の旅行者にも受け入れられていることからも、万人に共通する美味しさなのだとわかります。
素材を活かした料理を美味しくいただけるということは、心も満足できるし、栄養補給にも繋がるし、美と健康にかなりいい効果をもたらすのではないかと思っています。
皆さんもだしをもっと普段の料理に取り入れて、うま味成分を意識した素材の組み合わせを考えて、どんどん健康で美しくなりましょう!