母乳と昆布だしの共通点。離乳食に最適?だしのうま味で優しい味に

日本の食文化を担う肝心要なものといえば、「だし」そして、その日本代表選手は「昆布だし」と言えると思っていますが、その「昆布だし」が母乳と同じ成分だという話があります。その本当のところと、母乳の成分、昆布だしのうま味成分グルタミン酸と乳幼児の栄養補給(離乳食)について語りたいと思います。



話の発端と母乳について

昆布だし=母乳の発端は辻口博啓シェフ?

辻口博啓シェフといえば、和ラスクのお店を出したり、スイーツの一等地自由が丘でロールケーキ専門店を出したり、しかも出すもの出すもの大人気で、日本のパティシエを代表する方といってもいいくらいの実力者ですが、自身の打ち出すスイーツに対して、変わったアプローチをしています。

それが、スイーツに「昆布だし」を使うこと。

2014年10月開催のチョコレートの祭典サロン・ド・ショコラ パリでは、昆布だしを使った「DNAショコラ」を打ち出し、最高金賞(5タブレット金賞)を獲得されました。

そのショコラについては、2018年2月25日にTBS系列で放送された「ニッポン千年のだし」でも取り上げられました。

「ニッポン千年のだし」および辻口シェフの昆布だしを使ったチョコレートについての記事(新しいタブが開きます)

また、2015年上半期放送の朝ドラ「まれ」ではパティシエが主人公でしたが、作品中に出てくる製菓の指導を担当され、昆布だしを使ったケーキを生み出しました。

いずれも共通するコンセプトとしては、人間の原点としての「母乳」を意識しており、その母乳を再現するために「昆布だし」を使っています。

昆布だしと母乳、どう関係あるの?と思われますよね。




母乳の栄養素と子供の成長

人が生まれて初めて口にするのは「母乳」です。

初乳が非常に重要で、生まれたばかりの赤ちゃんに母乳を吸わせることが、赤ちゃんを健康に成長させる上で、また、生存率を上げるためには、欠かせないものだという話を聞いたことはありませんか?

世界保健機構(WHO)によって、生まれてから最低でも半年間はその「母乳」だけで育てることが推奨されています。また、母子ともに望めば、最長で2歳くらいまでは補助栄養として飲むことが推奨されています。

またケンブリッジ大学の研究で、母乳育児を適切に行った場合、母子ともに病気にかかる可能性が低くなるという結果が出たそうです。

母乳は、乳幼児が育つ上で非常に重要なものであり、乳児を半年間育て成長させられるだけの栄養素を含んでいる、ということを表しているかと思います。

母乳が出ない、出にくい人もいるので、少し酷な話かもしれませんね。

一般論、理想論として読んでください。

母乳の質(栄養成分)は産後、3段階で変化する

母乳は、赤ちゃんを産んでから1歳、2歳と成長するまでずっと同じ成分な訳ではないとのこと。

母乳は、3段階ステージ変化するらしいです。




母乳第1段階:初乳

最初の頃の母乳は、とにかく濃ゆい。飲むことで乳児に免疫力と栄養をつけます。

  • 免疫物質(抗体)が豊富
  • 栄養素が多い
  • 黄色っぽく、粘り気がある
  • タンパク質・ビタミンが多い
  • 脂質・糖質は少ない
  • 量が少ない
母乳第2段階:移行乳

産後4日以降、だんだん薄くなり、量が増えていきます。

  • 免疫物質が減少
  • 白っぽくなり、粘度が減る
  • タンパク質・ミネラル・ビタミンが減少
  • 脂質・糖質が増加
  • だんだん量が増える
母乳第3段階:成乳

産後2週間ほどで、さらっとした普通の濃さに変化し、たっぷり出るようになります。

  • 半透明で青みがかった白色で、粘度はなくサラサラになる
  • タンパク質・ミネラル・ビタミンはさらに減少
  • さらに糖質が増加
  • 量が多い

生まれたては、とにかく免疫をつけさせてウィルスなどの外敵から守ること、必要な栄養素をとにかく濃度濃く摂取させて、生存可能な状態に早く持って行こうとし、

それが安定してからは、栄養素補給はやや置いておいて、臓器を動かすためのエネルギー確保に重点を置いているような感じを受けました。




昆布だしと母乳は似た栄養構成

昆布だしと母乳の共通点は「グルタミン酸」の割合

母乳が昆布だしと同じ、と言われる栄養成分とは、アミノ酸です。

母乳は、乳幼児が育つ上で必要なだけでなく、成人後でさえ健康にいきていくために必要なアミノ酸をバランスよく含んでいます。

そしてその中でも「グルタミン酸」が飛び抜けて多いところが、非常に似通っています。

母乳と昆布だし、それぞれに含有するアミノ酸を多い順に挙げていきます。

母乳に含まれるアミノ酸

グルタミン酸、グルタミン、タウリン、セリン、アスパラギン酸、スレオニン、アラニン、グリシン、バリン、プロリン、ロイシン、アルギニン、リジン、イソロイシン、フェニルアラニン、ヒスチジン

昆布だしに含まれるアミノ酸

グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン

母乳に含まれるグルタミン酸は、初乳より成乳の方が含有量が多くなるそうで、消化機能を補うエネルギーに使われるそうです。

なので、離乳を進める間に昆布だしを使うのって良さそうですよね。

ここでちょっと気になるのが、グルタミンと、グルタミン酸は違うものなのか?ついでに、よく聞くグルタミン酸Naとはどう違うのか?ということなんですが・・・、違うものとして、ここでは深くは突っ込まないことにします。



母乳に似た昆布だしは初期の離乳食に最適

赤ちゃんとグルタミン酸の出会いは生まれる前から

母乳の中にグルタミン酸が含まれているという話はもうしましたが、実は、赤ちゃんが初めてグルタミン酸に出会う、グルタミン酸を味わうのは、生まれ出て初乳を吸った時ではないんだそうです。

お母さんのお腹の中の「羊水」にもグルタミン酸が含まれていて、生まれる前からグルタミン酸は舌に慣れ親しんだ、ものだということです。

ここまで聞くと、本当にグルタミン酸は、一人の人間のルーツ、原点、という感じがしてきますね。

赤ちゃんはグルタミン酸が好きなのか?

生後4ヶ月頃、離乳期の赤ちゃんに「酸味」「苦味」「甘味」「うま味」を味あわせたところ、「酸味」と「苦味」には拒絶反応を示し、「甘味」と「うま味」では穏やかな表情を示したそうです。

「酸味」は腐敗を感じさせ、「苦味」は毒を感じさせるので、どの食材が食べられるものなのかわからない乳幼児にとって、食中毒や死の危険を回避するための防衛本能として、その二つの味覚に関しては吐き出すほど苦手に感じられるようになっていると聞いたことがあります。

子供の頃、ピーマンとか魚の内臓部分とか、苦いものは苦手だった人が多いですよね。

一方で「甘味」「うま味」は、「炭水化物」や「タンパク質」を分解すると感じられる味であり、

食べられるもの、栄養となるもの、という感覚を起こさせるもので、かつ母乳に含まれているので、

味覚のうまく発達していない乳児や離乳食を食べ始めたばかりの子供には受け入れやすい味なのだそうです。

ちなみに「塩味」は子供がもともと好きな味なのだそうですが、

塩味は感じやすく、他の味がわからなくなってしまい、味覚が育たなくなってしまうので、控えたほうがいいそうです。

これは私の思いつきの考えですが、塩味がもともと好き、というのは、「うま味」が、グルタミン酸だけでは感じられず、Na(ナトリウム)などのミネラルと結びついて初めて「うま味」として成り立つからかもしれません。

なんにせよ、赤ちゃんは、グルタミン酸に親しみを感じると考えて間違いないでしょう。




離乳食への昆布だしの取り入れ方

昆布だしは「苦味」「酸味」消しに役立つ

「苦味」は毒を感じさせるので、子供は苦手、という話をしましたが、でも、ほうれん草やピーマンなどの苦味を感じさせる食材も、健康のためには食べて欲しいですよね。

そういう時には、「だし」を効かせて調理すると、食べやすくなるそうです。ほうれん草のおひたしに鰹節を載せるのは、食べやすくなる、という理由からきているのかもしれませんね。

だしを効かせることで、味も薄味で済むので、

苦味をごまかそうとして「塩分」を含む調味料をたくさん入れなくてもよくなるので、一石二鳥ですね。

と言っても、子供にとっては「苦味」は本当に苦手なものなので、「お母さんの料理は食べたくない!」と言われて偏食になって結局栄養不足に陥るよりは、無理せずゆっくり少しずつ慣れさせてあげたほうがいいかもしれませんね。様子を見てトライして見てください!

離乳食に使うだしは、昆布>干し椎茸>鰹節の順で。

「だし」が苦味の中和にいいし、味覚形成にいいというなら、鰹節からとった「かつおだし」や干し椎茸の戻し汁(「干し椎茸だし」)でもいいんじゃないの?と思われるかもしれません。

結果として、どちらでもいいそうですが、与える始めるべき時期が違います。

離乳初期の4〜6ヶ月の野菜に慣れたあたりは「昆布だし」「干し椎茸だし」、

そのあと赤身の魚に慣れた7、8ヶ月以降は「かつおだし」「煮干だし」もOK、

だそうです。

「干し椎茸だし」は初期でもOKとされていますが、干し椎茸のうま味は「グアニル酸」であり、母乳には含まれていません。

とすると、「グルタミン酸」を含む昆布だしを最初に取り入れるほうが、赤ちゃんには受け入れやすい無難な選択と考えられます。

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顆粒だしや昆布茶でもいいのか?

顆粒だしの原材料や成分を見てみてください。保存料など添加物が使われていると思います。それが長期的に見てお子さんの健康に害をなす可能性もあります。

また、塩分や糖分を添加されている場合もあります。離乳食初期には素材の味、それに慣れたら昆布だしのうま味のみで味付けするのが良いので、余計な味のついた即席だしは使うべきではありません

その後だんだんと調味料を使って味付けしていきますが、その段階であっても、顆粒だしを使うと、糖分や塩分を管理しにくくなります。

また昆布茶には、塩が多量に含まれています

赤ちゃんの離乳食は、うま味のみ、もしくは薄味が鉄則です。

赤ちゃんの味覚形成のためにも、顆粒だしや昆布茶ではなく、食材から取り出した「だし」を食べさせてあげて欲しいです。




昆布だしを使った離乳食の例と簡単なレシピ

ほうれん草の裏ごし

ほうれん草は、苦味がある野菜です。昆布だしで茹でると、うま味がほうれん草に染み込んで、それだけで苦味の感じにくく、うま味がたっぷり感じられます。

【材料】
・ほうれん草5グラム
・昆布だし100~200㏄

昆布だしを沸騰させて、ほうれん草を煮ます。かなり柔らかく、くたくたになるまで煮えたらほうれん草を裏ごし器などで裏ごしすれば出来上がりです。

ほうれん草は裏ごししにくい素材ですが、柔らかく煮ることで裏ごしがしやすくなります。お手元にフードプロセッサーがある場合は、昆布だしごと砕いてしまったほうが手軽にできますね。
できあがったほうれん草の裏ごしは、お粥に混ぜて食べさせてあげると抵抗なく食べてくれるでしょう。

また、繊維が豊富なので初期は葉先だけを使ってあげてくださいね。




人参あんかけがゆ

人参は、グルタミン酸との相性がいい食材だそうです。人参には糖分も含まれているので、昆布だしのうま味と相まって、乳幼児向けの味と言えると思います。

【材料】
・10倍粥30グラム(大さじ2)
・裏ごしにんじん15グラム
・昆布だし大さじ2
・水溶き片栗粉少々

10倍粥をあらかじめ作っておき、冷めている場合は事前に電子レンジで1分ほど温めておきます。
小鍋に、にんじんと昆布だしを入れて火にかけ、煮立ってきたら水溶き片栗粉を加えてとろみがつくまで煮てください。

片栗粉がダマにならないように、しっかりと水で溶いてくださいね。またお鍋に入れてからもしっかりかき混ぜると、なめらかなあんが出来上がります。

ただし、片栗粉はじゃがいもでんぷんの粉なので、2回食になってからとろみをつけたい時に少量ずつためしてください。最初のうちは片栗粉なしでもOKですよ。

白身魚のアラおかゆ

【材料】
・魚のあら一切れ(初期に適した鯛などの白身魚)
・ごはん食べそうな分
・昆布だし適量
・水適量

小鍋にごはん、昆布だし、水を入れてひと煮立ちさせます。魚のあらも加えて、さらにことことと煮ます。赤ちゃんの状況によって、柔らかさを加減してくださいね。また、初期は鯛などの白身魚の切り身を使って作りましょう。ごはんが柔らかくなったら火を止めます。

具と煮汁適量をすり鉢に移してすりこぎですります。すべてがなめらかになったら完成です。お魚の骨に気を付けてくださいね。キャベツやにんじんなども加えて作ると、さらに栄養満点のお粥になります。

さつまいものだし煮(大人用味噌汁と同時に)

【材料】(赤ちゃん1人と大人3~4人分)
・さつまいも200グラム
・カットわかめ2つかみ
・昆布だし1リットル
・味噌適量

昆布はふきんで拭き、軽く汚れを取ります。鍋に昆布と水1リットルを入れ、沸騰したら火を止めて10分間放置します。

さつまいもは皮をむき、水にさらしておきます。昆布だしに皮をむいたさつまいもを入れて火にかけます。さつまいもが柔らかくなったら火を止め、赤ちゃんが食べる分量を取り出して裏ごしし、昆布だしでなめらかにのばします。これで、赤ちゃん用のさつまいものだし煮が完成です。

残った昆布だしに味噌をといてわかめを入れ、お好みで豆腐なども加えたら、大人用の味噌汁が完成します。

味噌汁を作る時に赤ちゃん用の素材も煮てしまうと、手間が省けて便利ですね。

ここに紹介したレシピは、すべてクックパッドにあるものです。「昆布だし」「離乳食」を検索ワードにして調べて見てくださいね。




まとめ:昆布だしはどんどん食事に取り入れるべし

  • 母乳と昆布だしは、含まれる「グルタミン酸」の割合が似ている。
  • 赤ちゃんは生後母乳を飲むより前、生まれる前から羊水の中に含まれるグルタミン酸を口にしていた。
  • 昆布だしは母乳に近い成分のため、初期離乳食から風味づけに使える。
  • 昆布だしのうま味(グルタミン酸)は、乳幼児の味覚形成にとって重要。
  • 昆布だしは野菜の苦味消しにも使える

昆布だしって、なんだか万能なように思えてきました。

今まで、だしって顆粒だしがほとんどで、昆布から出汁とるの面倒、って思ってたんですけど、うま味を活かした滋味あふれる料理が作りたくなったし、食べたくなりました。

日本料理でも西洋料理でも、作る時に「なんか味気ないな、うま味が足りないな」って時、あるんですよね。そういうときは、いろんなだしの素を入れます。鶏がらスープの素、ホタテだし、昆布茶、フォンドボー、ブイヨン・・・

そういったうま味を足さないと、深い、リッチな味が出ないんですよね。

うま味って、偉大ですね。

だしを使うことで味付けは控えめで良くなるということは、乳幼児だけでなく、大人の減塩や糖質制限にもいいかもしれませんね!

みなさんも昆布だし、色々な料理に使って見てくださいね。

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